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編集長のズボラ料理(129) アサリと豚肉の煮物

とろみは軽く

 毎日新聞で編集委員をしているころ、大阪・北新地の料亭によく行った。すごいでしょう。
 会社は新地からそう遠くない。編集委員は一線の記者ではないから、現場を走り回るわけではない。だから、時間に余裕がある。そうなると、新地は編集委員の特権のようなものだ。編集委員は偉いのだ。
 と、威張ってはみたものの、ちょっと気がひける。実は良い編集委員と悪い編集委員に分かれるのだ。良い委員は、自分の得意分野を持っていて、奥深い原稿を書く。一方で、ベテランになってもとりえがなく、部長にもなれない記者がいる。何か肩書がないとかわいそうだ、という理由で編集委員になる人もいる。
 僕は自信を持って、後者の方である。そうなると、特に秀でたものがないから、新地に行くくらいしかない。
 と書いてみたが、心がさらに痛んできた。新地で行くのは料亭ではない。実は小料理屋である。新聞記者が料亭など、行けるわけがない。ごめん。
 告白ついでに言うと、店に行くのは夜ではない。新地の小料理屋は高いのだ。だから、ランチに行く。ごめん、ごめん。
 僕が行っていた小料理屋は、昼だけ親子丼を出す。それを頼む。1000円だった。ミニ懐石だとか、ミニコースを考えていた人には、ごめん、ごめん、ごめん。
 さすが、新地の小料理屋。丼といえどもあなどれない。何に感心するかというと、丼についてくるアサリの吸い物だった。このために通ったようなものだった。丼さん、ごめんなさい。
 アサリを使う。豚肉も使う。その2つを鍋で煮る。湯の量は少なめで、ひたひた程度。砂糖、しょうゆ、みりん、酒で味をつける。最後にネギを加え、カタクリ粉でとろみをつける。上品な小料理屋の味ではないかもしれないが、おかずや酒のあてには良いと思う。親子丼もいらないと思う。(梶川伸)2015.05.13

更新日時 2015/05/13


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