押しつけ花物語(17) 梅の花の裏表
定年退職する人に贈るため、押しつけ花を作ってほしいと、友人に頼まれた。「いいよ」と軽く応じたが、難しい注文がついてきた。「職場の敷地の花を使ってほしい」
押しつけ花は、野の花を中心に作っている。しかし、春を待つ冬の終わりの時期に、野の花は少ない。都会の会社の敷地では、特にそうだ。
友人と探しに行った。野の花はホトケノザとハコベしかなかった。仕方がないので、ほかに草を摘んだ。それでは寂しい。植栽の梅と椿を数輪ずついただくことにした。
梅の花を押すと、予想しなかったことが起きた。花の裏側のがくの部分が、星型の赤茶色に仕上がっている。予想をしなかった愛敬のある赤みだった。表側の雄しべは繊細すぎて、押すとはきりしなくなる。
結局、押しつけ花は、梅の花の裏側を主役にした。半田舎住まいの自宅周辺で見かけた野の花も添え、何とか定年の日に間に合った。梅の花に感謝。(梶川伸)2015.03.20
更新日時 2015/03/20