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編集長のズボラ料理(90) 貝柱のみそ漬け焼き

西京みそを使うと良い

 今年もまた、以前住んでいた高松から、サワラのみそ漬けが送られてきた。いや、6月に入っていたから、「やっと送ってきた」と言った方がよい。遅すぎる、待ちわびていたではないか。
 一時はあきらめていた。玄関のピンポーンが鳴って、宅配便の声が聞こえると、玄関までスタートダッシュをかけたが、何度もあてが外れた。きっと忘れたに違いない。友など、あてにならない。「去るものは日々にうとし」と言う。
 サワラは「鰆」と書く。春の魚であって、梅雨の魚ではない。それなのに、サワラはやって来ない。やって来たのは、サッカーで言えば、後半の45分が過ぎ、アディショナルタイムに入って、レフリーが試合終了の笛を吹く直前だった。だから、ホッとした。
 高松に住んでいた時、仲良しの夫婦にサワラのみそ漬けを作ってもらい、大阪の知り合いに送ったことがある。その時は、「良いサワラがなかなか手に入らない」という理由で1カ月も待ちぼうけを食ったことがある。きっと今回の友も、何かの理由があって遅れたに違いない。忘れるはずなどない。じっと待っていれば良いのだ。持つべきものは友だ。
 サワラが届くには、理由がある。こちらからイカナゴのくぎ煮を送ったお返しである。と言っても、くぎ煮は僕が作るわけではない。友人の義母がイカナゴ名人なので、ねだってたくさん作ってもらい、その一部を高松に送る。しかも、善意に全面的に甘えることにしている。持つべきものは友だ。
 わらしべ長者という話がある。何度も物々交換をし、そのたびに値打ちのあるものに変わっていく。僕の場合も交換ではあるが、元手がかかっていないから、わらしべ長者どころではない。濡れ手で粟(あわ)とも言えるし、棚からぼた餅、棚からサワラである。
 サワラは讃岐の白みそに漬けてあり、丸い容器に入っている。だから、白みその量は多い。サワラを食べ終わると、みそがもったいない。そこで、スーパーで白身の魚やホタテの貝柱を買ってきては、みそ漬けにする。イカナゴは夏が来るまで、次々と変身して僕を楽しませてくれる。持つべきものは友だ。
 貝柱に白みそをつけてラップで包み、冷蔵庫で2晩ほど寝かす。みそを取ってから、網焼きにするか、ごく少ない油を使ってフライパンで焼く。時間はかかるが、手間はかからない。僕の場合は、白みそを買ってく必要もない。そうだ、来年もイカナゴのくぎ煮をおねだりしようっーと。(梶川伸)

サワラのみそ漬け

更新日時 2014/06/28


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