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編集長のズボラ料理(55) カボスご飯

ご飯に乗せるものは好みで

 徳島の友人が、秋になるとスダチを送ってくる。お互いに定年になり、それぞれ好きなことをしているのだが、友人の楽しみの1つがスダチを育てることらしい。収穫すると、仲間に送るという。その仲間というのが、ちょっと変わっている。鳴門ワカメを売るグループなのだ。
 毎年5月の3、4、5日の3日間、大阪市で中之島まつりが開かれる。市役所の周りが歩行者天国になり、たくさんの露店が出る。市民活動をしている人たちの店もあり、友人もテントを張って店を1つ出す。
 店を出す最大の目的は、薬害や医療被害をなくすための訴えである。その活動資金のために、鳴門の糸ワカメを仕入れて、行商に来る。そこに仲間が集まる。
 目的は良い。まじめに薬害防止などを訴えるビラを配るし、まじめにワカメも売る。正確に言えば、まじめな参加者は、ではあるが。
 マッチ売りの少女ならぬワカメ売りのおっさんたちには、もう1つ違った目的がある。中之島まつりは年に1回の同窓会でもある。友人はテントの中でおでんを作る。参加者は飲み物などを持ち寄る。僕はたいてい2日間参加する。1日目は梅田の阪神百貨店の地下で、551の豚まんを買って持っていく。テントに着くと、名前など呼んではくれないが、「今年も豚まんが来たで」と歓迎してくれる。
 2日目は趣向を変える。阪神百貨店の地下で、魚屋のすしを買う。マグロ、イカ、ハマチなど1個53円という1番安いものばかり選んで、テントに運ぶ。そうすると、「また、すしが来たで」と、声があがる。これを、毎年繰り返している。だから、梅田から中之島までの展開は、すべて同じである。たまに、同じ53円でもサーモンの数がアジより多いといった誤差の範囲である。
 僕はまじめでない方の参加者で、テント着くと、夕方まで飲んでしゃべる。「あの時はなあ」と、活発に動いていた時期を振り返る。これも毎年、同一の展開となる。水戸黄門である。
 ワカメ売りのおっさんは、いつしかワカメ売りのじいさんになってきた。そんなことも影響しているのだろう。スダチをもらうことで、年に1回のつながりが、年に2回に増えたような気がする。まつりの時に買ったワカメを水でもどし、しょうゆとスダチをかけて食べる。これも、毎年のことになってきた。
 大分県にゆかりのある友人や近所の人がいて、カボスをもらう。カボスはスダチよりも、酸味が柔らかい気がする。そこで、ご飯に直接かける。ご飯の上に野沢菜やシラスやカツオ節など、好きなものを乗せ、カボスをたっぷり、しょうゆは少々ふりかける。これも、毎年のことになってきた。年をとると、いたるところで水戸黄門的となる。(梶川伸)

中之島まつり スダチ カボス

更新日時 2013/09/17


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