編集長のズボラ料理(779) アサリの天ぷら
スーパーの魚のコーナーに行く。頭や内臓を切り取った魚を売っている。大きな魚ならば、それも納得できる。家でそうしようと思えば大変だ。
ところが、小アジや小イワシでも、処理したものを見かけるから、感心する。家でしようものなら、小さいのでもっと大変だ。
よく考えてみれば、スーパーの人の方がも何倍も大変だ。膨大な数を扱うからだ。
そのうえ、売り値は1パック300円だったり400円だったりで、もうけがあるのだろうかと、心配になる。そして、手間と努力に涙があふれそうになる。
でも、涙を抑えて、手を伸ばす。小アジの南蛮漬けや、小イワシのオリーブオイル揚げには、こんな便利なものはない。
よく見れば、魚だけはない。野菜のコーナーへ行けば、ラーメン野菜のように、カットなどの下ごしらえをした野菜が混ぜたものを売っている。水煮のタケノコやサトイモも売っていて、皮をむく必要がない。
便利だから、ラーメン野菜は買う。ただ、そばにはモヤシのコーナーがあるのだが、根切りモヤシはちゅうちょする。買ってみたら、根はついていて、結局は自分で根を切る失敗を経験しているからだ。それも何度か、いや十何度か繰り返している。ちゅうちょするのは当たり前だが。根切りの誘惑は強く、また買うこともあり、反省の回数は増えていく。
アサリは身をむいたものもあるが、たいていは殻のついたものを買う。時代の流れに反している。何でだろう。
酒蒸しや、白ワインをふったニンニク炒めは、やはり殻がないと様にならない。第一、身だけでは量が少なくなって、見栄えがしない。アサリのスープを味わうためにも、殻がいる。手間ではあるが、殻から身をはずすものおもしろい。アサリを食べながら、手を汚しながら、時代遅れな食べ物だと、しみじみ思う。
なるべく大きな殻付きのアサリを買って、酒蒸しにする。身を外して水分をふき、小麦粉をまぶす。スープは鍋に移し、少し白だしを加えて熱し、ゼライスも入れて煮る。容器に移して、冷めたら冷蔵庫に入れて固める。
小麦粉に少しコーンスターチを加え、青ノリの粉も入れて水で混ぜ、天ぷらの衣を作る。衣は厚めにするため、水を抑えめにする。アサリに衣をつけ、油で揚げる。固まったスープは細かくして、天ぷらの上に乗せる。
即席麺もどんどん簡単になる。袋麺はカップ麺に。確かにその方が食べる際に手間が省ける。ス-パーで袋のスペースはどんどん狭まり、5年ほど前からはカップのスペースが逆転してのさばっている。袋派の僕は、肩身の狭い思いをしている。だから、アサリを見習えと、負け惜しみをつぶやく。(梶川伸)2024.12.25
更新日時 2024/12/25