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編集長のズボラ料理(770) 丸ナスのみそマヨネーズ焼き

青ノリの粉か乾燥パセリの粉を振って、少し彩りを添えてもいい

 丸いナスを意識したのは、友人と一緒に行った居酒屋さんだった。昭和の終わりのころだったから、令和、平成と2つも時代を遡ってみる。
 友人と居酒屋さんに行くと、メニューに揚げ出しナスがあった。当時は、揚げ出し豆腐が居酒屋さんの定番だったので、僕もよく食べた。しかし、揚げ出しナスは食べたことがなかったので、注文してみた。
 米ナスを半分に切って切り口側に包丁で切れ目を入れ、油で揚げてからお椀に入れ、上からしょうゆ味のだしがかけてあった。さらに大根おろしが乗せてあった。まさに揚げ出し豆腐のナス版。ナスのトロッとした食感と、油との相性の良さが気に入った。
 それ以来、居酒屋さんではよく世話になった。揚げ出し豆腐ほどではないが、安いこともあったて、頼みやすかったのだ。いろいろな店で見かけたから、ヒット商品だったに違いない。
 そのうち飽きてきて、僕はあまり食べなくなった。世間も同様だったのだろう、見かけなくなってしまった。ツバメよ、高い空から教えてほしい、地上の揚げ出しナスを。
 丸いナスは米ナスだけではない。僕は京都府と奈良県の府県境に住んだいる。半田舎なので、スーパ-でも地元の農産物を売っている。先日も「山科丸なす」を買った。テニスボールを少し大きくしたような大きさ。田楽にするとトロトロ。丸いナスはみんな同じなのだろうか。
 府県境の南側の「大和の丸なす」を買うこともある。こちらはソフトボールほどの大きさだが、それでも中は柔らかい。「丸かろう うまか郎」のキャッチコピーには笑ったが、トロトロが「うまか郎」に結びついているようだった。
 地名がついてナスで、記憶に残っているものがある。遊び仲間で和歌山県湯浅町に行った時だった。
 メンバーの1人はニッチな食べ物の好みがある。その時も「湯浅ナスを食べたい」と言い出した。聞いたこともないナス。そんなのを売っているのかと思ったが、何と湯浅ナスののぼりが出ている店があるではないか。運のいい友人だ。
 店に入ると、さらに運のいいことがわったのた。女主人によると、湯浅ナスはその店が一手卸しをしているという。何の変哲もない店が独占とは、と驚いたが、さらに驚くことがあった。作っているのは、わずか8軒。それなら独占できる。
 さっそく買おうとしたが、女主人はどうも乗り気ではない。話しているうち、シーズンの終わりであまり栽培しておらず、しかも2つ連続の台風に見舞われ、B級品しかないのだという。それでも食べてみたいので無理にお願いをした。
 ナスを店の奥から出してくると、確かに皮の一部が茶色くカサカサになっていたが、気になるほどではない。女主人の真面目さを感じるやりとりのうえ、1つ100円で買った。 
 今回は丸ナスを使う。皮をゼブラ状にむき、縦半分に切る。切り口には包丁で十字に切れ目を入れる。まず皮の方を上にしてガスレンジで焼き目をつけ、いったん取り出す。マヨネーズとみそを混ぜ、切り口の方に塗る。さらにとろけるチーズも。塗った面を上にして、ガスレンジで焼く。
 湯浅ナスは思い出深い。でも、それは買うまでのことで、どんな味だったかは全く覚えていな。いい加減な思い出である。(梶川伸)2024.11.08

更新日時 2024/11/08


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