編集長のズボラ料理(756) レンコンしんじょうの蒸し物
定年後クッキングをしている。新聞記者現役時代は料理が好きだったわけではない。いや、料理など縁がなかった。
いやいや、縁がなかったというより、そんな時間はなかった。仕事が不規則で、忙しい時は本当に忙しかった。それに仕事が終わったあとは、さらに不規則で忙しかった。同僚と飲みに行くので。だから自宅で夕ご飯を食べることが、ほとんどなかった。
その結果、会社の宿直室でよく泊まった。新聞社には宿直室がたくさんある。ふろもある。帰るのが面倒くさくなると、足は会社に向かった。
おかげで、僕には美しいニックネームがついた。「シャネルの男」。おしゃれな服を着ているからではない。「社で寝る男」
料理はを作る機会はなかったが、昼ご飯やら酒のあてやら、食べる機会は多かった。そこで知ったことの1つが、食感・歯ざわりだった。その代表格がレンコン。
新大阪駅の近くの喫茶店でカレーライスを食べると、細かく切ったレンコンがルーに混じっていた。店の女性は「食感がおもしろいので」と話していた。しばしば行った居酒屋さんで、酒のあてにコロッケを頼むと、レンコンのみじん切りが入っていた。女将は「食感ですよ」と、自慢していた。
遍路の先達(案内人)を始めて、レンコンとの縁は深まった。1番札所は・霊山寺は徳島県鳴門市にある。鳴門市はレンコンの産地で、遍路旅の昼食に、レンコン料理を基本にした店「れんまるカフェ」にも行った。
遍路メンバーにはベテラン主婦が多かった。料理もよく知っていて、「レンコンはすり下ろしたものとみじん切りにしたものと、2種類を一緒に使ってみて」と教えてもらったことがある。
自宅近くのスーパーに、なぜか徳島の農産物コーナーがある。そこをのぞくと、新レンコンが出ていた。その時、ベテラン主婦の言葉を思い出した。即実行。
レンコンはすり下ろしたものと、みじん切りしたものをボウルに入れる。はんぺんも切って入れる。さらに卵の白身、細かくした干しアミエビ、青ノリの粉、白だしと小麦粉少々を加えてよく寝る。ボール状に成形し、酒を少しふって蒸す。
記者現役時代を思い返すと、ここまでよく作られるようになったもんだ。偉そうに書いたが、実はこのレンコン料理は2回目の挑戦だった。1回目はボール状にした後、鍋にだしを取り、味つけをしてボールを煮て、レンコンしんじょうの吸い物にしようとした。ところが、ボールはすべて分解してバラバラになってしまった。大失敗は隠しておこうか思ったが、記者は真実を伝えなければなければ。偉そうなのか、恥さらしなのか。(梶川伸)2-24.09.07
更新日時 2024/09/07