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編集長のズボラ料理(686) 緑の卵焼き

コンブ茶を入れすぎると辛くなるので注意

 新緑はいいなあ。特にイロハモミジの青紅葉は。その時期になると、いつもそう思う。太陽の光を通すような初々しさ、爽やかさ、若々しさ。
 そして夏が過ぎ、秋になり、晩秋になると、モミジは赤くなり、「青」が取れて紅葉となる。これもいいが、あまり近くでは見たくない。よく見れば、葉はカサカサしていて、つい自分の老いと重ねてしまうからだ。
 というわけで、食べ物でも緑は好きだ。例えば青ノリ。僕が店や宿で食べたもの中で、1番印象に残っているのは、淡路島・沼島の旅館「木村屋」のハモすき。2番目が何と、四万十川の青ノリ。ただし四万十川で食べたのではなく、その昔にグルメの弁護士に連れて行ってもらった大阪市・天王寺の「魚市」という和食の店だった。
 寒い時期だった。その年の1番ノリのようなものを、キンキンに冷やした出汁に泳がしてあった。青ノリではあるが、色は緑。出汁はほぼ透明で、緑が何とも鮮やかだった。
 青ノリには目がない。奈良市・西大寺の大衆寿司居酒屋「杉玉」では、ポテトサラダを頼む。球状で緑色をしている。酒蔵で新酒ができた事を知らせる杉玉を軒先につるすが、それをイメージしているのだろう。球の外側は、青ノリがまぶしてある。つまり緑のボール。
 食べた後は、必ずビールを飲む。飲んだ後に食べると、歯にノリが張りついてしまう。これは青葉ではなく、青歯。気づかないのは老いの象徴でもある。
 遍路で四国に行くと、四万十川の青ノリを売っていれば、必ずといっていほど買う。吉野川の青ノリを買ったこともある。徳島県美波町の道の駅・日和佐では、「日和佐青のり」を買った。
 高速道路・高松道の府中湖サービスエリアでは、「讃岐のあん餅雑煮風パン」を見つけて買った。香川県は雑煮にあん餅を使うので、それをもじっていた。パンの表面に青ノリがついていた。あん餅雑煮では、最後に青ノリをふるので、ある意味で忠実な模倣である。ただ、雑煮の味は全くせず、パンはパンだった。
 緑色の卵焼きを作ってみようと思った。卵をボールに入れて溶く。キャベツをみじん切りにして加える。青ノリとコンブ茶の粉、粉茶も加え、さらにみりんと牛乳少々も足し、よく混ぜて卵焼きにする。
 青紅葉ほどではないが、卵に緑が混じるできばえ。ただ、人生の晩秋を迎えているので、食べても青春のような若々しさを取り戻せるわけではない。そこで、焼け酒で清酒を飲む。青春に音が似ているではないか。飲み進むと、赤くなるし。(梶川伸)2023.09.16、

更新日時 2023/09/16


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