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編集長のズボラ料理(621) ゴーヤのチーズ天ぷら

粉チーズは多めがいい

 僕は歌が下手ので、カラオケボックスとは縁がない。カラオケボックスより以前、カラオケスナックがはやったが、これもあまり行かなかった。たまには行ったが、いいことはなかった。
 会社の玄関で編集局長と出会い、「飲みに行こう」と誘われた。若いころ、一緒の取材グループに属していた大先輩で、そのころは仕事のあと、よく飲みに行った。
 それから随分と年を経て、久し振りに行った店はスナックだった。大先輩が「歌を歌え」と言う。仕方なくカラオケのマイクり、「和歌山ブルース」を歌った。大先輩も僕も初任地が和歌山で、これを会話の糸口にしようという作戦だった。
 ところが、歌い終わると、第先輩は何となく楽しそうではない。すると店のママが耳元でささやいた。「あれ、編集局長の曲なの」
 そういえば大先輩の歌など聞いたきとがない。きっと僕と同じように歌が得意ではなく、唯一歌えるのがその曲だったのだろう。その晩、会話は弾まなかった。
 そんなこともあって、歌を披露するのは極力避けている。一方で、進んで歌う人もいる。その勇気には恐れ入る。
 大阪市大正区の沖縄料理の店「うるま御殿」には時々行く。店の人が舞台で島歌を演奏し、各ステージの最後には客がカチャーシーを踊る。演奏の最中に、三線(さんしん)を弾いていいる人が「歌う人はいませんか」と声をかけ、飛び入りで歌う人もいるが、おおむね常連客で、初めての人はまれだ。
 娘夫婦を店に連れていったことがあった。声がかかると、娘婿が1番に手を挙げた。うまいとは言い難いのに、勇気があるので見直した。彼の場合はここもでである。が、……。
 「リスナップ」という漫才コンビが友人で、一緒に行ったことがある。メンバーの1人は、婚約者の女性を連れていた。声がかかると、彼女が舞台に登って歌った。その2人は結婚し、彼女は三線を習い、島歌のライブをするようになった。勇気がプロへと引き上げた偉い人だ。
 うるま御殿では、チャンプルーやスクガラス、ジーマミ豆腐、ラフティ、島ラッキョウなど、沖縄料理を食べるのが楽しみだ。ゴーヤも頼むが、チャンプルーではなく、天ぷらが気に入っている。今回はそのアレンジ。
 ゴーヤは縦半分に切り、ワタをのぞいて、半円形に切り、ビニールの袋に入れる。多めの小麦粉、コショウ、たっぷりの粉チーズを袋に入れて、よくまぶす。ボールに移して少し水を加え、衣にして油で揚げる。
 うるま御殿の歌で、もう1つ印象に残っていること。女性客が舞台に上がり、「芭蕉布」を歌った。とても上手だったので、声をかけた。「歌手ですか?」。返事は「いえ、声楽家です」。な~るほど、である。(梶川伸)2022.09.16

更新日時 2022/09/16


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