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編集長のズボラ料理(475) ピスタッチオローストビーフ

砕いたピスタッチオは上にもふりかける

 ローストビーフにはごちそう感と高級感が漂う。大阪市・はり重はローストビーフをコールドビーフと呼ぶ。親類が時々、お歳暮として送ってくれる。そうなったら、大騒ぎである。
 以前、娘夫婦におすそ分けをした。夫婦は別々にラインで「おいしかった」と送ってきた。それどころか、「また送ってきたら、よろしく」とも付け加えてあった。
 そんな機会が、たびたびあるわけではない。送る食品のローテーションがあるようで、一巡しないとコールドビーフの年にならない。
 はり重のお歳暮が届いとする。それだけで喜んではいけない。ステーキ肉の時もあるからだ。開けてみて、コールドビーフだった時には、大変なことになる。
 まず、娘にその日が来たと連絡する。次にきれいに半分に分ける。半分はその晩食べる。翌日あたりに娘が取りに来るので、早く食べておかないと、うちの分まで食べられる恐れがある。
 料理上手な友人の得意技の1つは、ローストビーフだ。低い温度で湯煎するようにして、長時間かけて作るらしい。
 遊び仲間で毎年のように、初寅の日に京都市・鞍馬寺にお参りする。叡山電鉄出町柳駅に集合する。友人は「むしおさえ」に料理を持ってくる。その中にローストビーフがあると、大騒ぎである。
 お参りの前に食べることになる。駅のすぐ前は鴨川で、その中洲のベンチで食べることもある。寒いのでカップ酒が必要になり、コンビニで買う。それでも寒い。手がかじかんで、ローストビーフを1枚ずつ食べるのに苦労する。
 苦労はそれだけではない。ハトが時々フンをする。空からの攻撃から、ローストビーフを守らなければならない。身をもって守った仲間の1人は、「新年から運がついた」と言って、笑う以外になかった。お参りどころの話ではない。友人のローストビーフを食べるには、そのくらいの覚悟がいる。
 僕もローストビーフを作って、友人に対抗しようと決意した。普通のタイプでは、友人に完敗するのは明らかなので、フェイントをかけてみた。
 ローストビーフ用の牛肉の塊を買い求め、表面に塩、コショウをつけてビニール袋に入れ、しばらく冷蔵庫に入れておく。ピスタッチオをビニール袋に入れて、上からたたいて細かく砕く。牛肉の薄い方の面の真ん中に切れ目を入れ、ピスタッチオを挟み込む。
 フライパンにオリーブオイルをひき、ニンニクスライスを加えて熱する。牛肉の側面の4面を焼いた後、表、裏をニンニクスライスと一緒に焼く。それぞれ2分程度。肉は取り出し、アルミホイルで包み、まだ熱いフライパンに再び入れ、ふたをして余熱でさらに火を通す。赤ワイン、ケチャップ、ウスターソース、バター、牛乳少々を、肉を焼いたフライパンに入れて熱し、ソースにする。
 これで友人に勝てるか?敵はやり手だが、たまには凡ミスもするだろう。それに期待するか。(梶川伸)2021.01.22
 

更新日時 2021/01/22


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