編集長のズボラ料理(452) 鮭とキノコのホイル焼き
僕は「サケ」だった。ところが、おふくるは「シャケ」と言った「年寄くさいなあ」。それが僕の印象だった。
漢字で書けば鮭。酒と間違えるから、シャケと言ったのだろうか。
シャレのつもりの軽いノリで書いてみたのだが、念のためにインターネットで調べ、マルハニチロによる説明読むと、意外なことが書いてあった。
全国15歳以上の男女1000人を対象に鮭についてのアンケートをとった。その結果、「サケ」と読む派が38.2%で、「シャケ」と読む派が61.8%だという。おふくろは多数派だったのだ。おふくろはもともと自己主張の強い人間だったので、これを知ったら、「シャケ、シャケ」と大声でシャケんだことだろう。
ちょっと悔しいので、漢字の鮭の読み方を調べてみた。すると、「サケ」も「シャケ」もあった。ダメを押されたわけだが、まだ納得いかない。
そこで思い出したのは、木彫りの熊の人形である。黒い熊が鮭をくわえている。北海道土産として、僕の家にあった。ほとんどの家でも、玄関の靴箱の上か、たんすの上のケースの中にあった印象がある。たんすの上ではほとんどの場合、宮城のこけしか、博多人形と同席していた。
そんな家庭内風景からの結論がある。鮭は北海道のもので、方言としてシャケと発音され、それが熊によって全国に広がったのではないか。
ところが、この仮説をマルハニチロが打ちのめす。「生のままの切り身をサケと言い、シャケフレークや塩ジャケなど加工したものをシャケと読む、という説がある」
盛岡市の深沢紅子・野の花美術館に行った際、目の前の北上川で、鮭が死んでいるのを見た。美術館の人に聞くと、「産卵のために遡上してきて力尽きたのでしょう。宮城県の河口から200キロもあるので」とのことだった。
感動して聞いたが、最近はもっと南、西の方の川でも、鮭が戻ってきたというニュースをよく見るようになった。酒は熊が広げたのではなく、もとも広範囲にあったなじみ深い魚だったのかもしれない。
鮭(サーモン)は切り身を使う。ブナシメジ、エノキダケなのどのキノコは石づきを取って、食べやすくほぐしておく。アルミホイルの乗せて塩、コショウをふり、オリーブオイルをかけ、ホイルを閉じて蒸し焼きにする。
うちの熊は、とうの昔に行方不明になった。みなさんの家ではどうだろう。最近は熊が人里に出てきて、嫌われ者になってきた。昔は熊は家庭内にいて人気者だったのに。(梶川伸)2020.11.05
更新日時 2020/11/05