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編集長のズボラ料理(427) ジャガイモのビシソワーズ

とろみ具合は好みで

 夏は食べ物を何でも冷やす。暑いから、確かに冷たいものがほしくなる。だか、待てよ。
 暑いから、店でも家でもクーラーがかけている。涼しさの中で冷たいものを食べて、何か意味があるのか。
 でも、冷たいものを食べる。そんなもんだと、刷り込まれている。「冷やし中華始めました」は、初夏の季語のようになっているほどで、この旗が出れば、食べなければならない。パブロフの犬、人間に冷やし中華である。チュールチュール、チャウチュールみたなものと言ってもいい。
 では、冷麺(れいめん)はどうか。これは夏との関連性は薄い。むしろ、焼き肉を食べた後の締めのイメージがある。
 仲間で食べに行くと、仕切り役が声をかける。「最後はピビンバにする? 冷麺にする?」。たいていは冷麺派が多数を占め、おもむろに注文する。これは儀式に近い。
 僕も学生さんたちと一緒に行って、儀式を行ったことがある。「最後はピビンバにする? 冷麺にする?」。ところが空気が読めない学生で、「両方とも」と言った。これでは、厳かさと、慎み深さがないではないか。
 盛岡市の冷麺の場合は、やや様相が違う。盛岡通の仲間に、人気の焼き肉店「食道園」に連れて行ってもらったことがある。
 盛岡冷麺には変わった儀式があることを、その友人から教えられた。焼き肉とセットで頼む。そこで、ハラミ2人前と冷麺4つを頼んだ。行ったのは4人なのだが、別に1人前ずつ頼む必要はない。形作りとして、半人まえずつ食べることにした。夏とは正反対、1月の寒い時期だったが、店内を見渡すとみんな冷麺をすすっていた。
 そうめん、冷やしうどん、ざるそば、冷静パスタ。麺類は何でも夏は冷たくする。麺に限らない。スープも。ということで、今回はジャガイモのビシソワーズ。
 ジャガイモは皮をむいで、薄いイチョウ切りにする。タマネギは薄切り。この2つをオリーブオイルとバターで炒め、水とコンソメスープの素、コショウを加えて煮る。ジャガモ、タマネギが柔らかくなったらミキサーにかける。この際、牛乳、生クリーム、煮汁を加え、とろみ具合を調整しながら攪拌(かくはん)する。カップに注ぎ、冷蔵庫で冷やしておいて、テーブルに出す。
 冷たいスープと言ってもいいのだが、ビシソワーズと言いたい時は、食べる前にみじん切りか粉のパセリをふって、かっこをつける。これはビシソワーズのための儀式である。(梶川伸)2020.08.08

更新日時 2020/08/08


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