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編集長のズボラ料理(420) 卵豆腐のギョウザ

好みでワサビを添える

 食感とは味の一部なのだろうか。夏になると、そんな疑問がわく。入道雲のような季節ものではある。
 代表格は冷やしそうめんだろう。冷たくてツルツル。それが夏にはふさわしい。と、思い込んでいる。でも……。
 「冷たい」ははたして、味なのだろうか。夏のなると、かき氷を食べまくる友人がいる。宇治やら金時やら、種類は豊富だから、氷に味がなくても納得できる。
 そうめんは違う。そうめん自体には大した味があるわけではないし、つゆにしてもそんんな差があるわけではない。だから、「芳醇な味と香りが口の中に広がる」といった食レポなど、聞いたこがはない。
 冷メンや冷やし中華なら、まだわかる。具がたくさん乗っているから、味がある。しかも、ハムにするかベーコンにするか、ゆでたモヤシは乗せるか、缶詰めのサクランボは飾るのか、など、いくつもの組み合わせがあるうえ、たれもポン酢風のものもあれば、ゴマだれもある。食レポには困らない。
 そうめんは困る。「冷たくて、ツルツルとのど越しがいい」。それしか言うことがない。でも、「のどごし」は味だろうか……。
 高松に住んでいたころ、さぬきうどんの食べ方を、地元の人に教えてもらった。「のどごしを楽しむ」だった。その極意は「かまずに飲み込む」のだという。それでは味もへったくれもないではないか。第一、うどんを飲み込むなんて、できるはずがない。
 偉そうに書いてきたが、ひるがえって自分のことになると、夏にビールをプハァーと飲んで、「のどごしがいい」と勝手なことを言っている。グラスが冷蔵庫で冷やしてあれば、「この冷たさがたまらん」と喜び、セットのように「冷たい絹ごしの冷やっこ」を注文して、ツルツル食べる。結局、夏は冷たくてツルツルしていればいいのだ。
 卵豆腐も冷たさとのどごしだろうが、今回はひねくれている。買ってきた卵豆腐をキッチンペーパーで包んで、水切りをしたあと、4等分する。大きい方のギョウザの皮を用意し、大葉を4分の1に切って皮の上に乗せる。その上に卵豆腐を置き、皮で包む。普通のギョウザのようにフライパンなどで焼く。水を注いで蒸し焼きにする時、卵豆腐についているたれも少し加える。残りは食べる時にかける。
 皮があるので、のどごしは落ちる。しかし、メーンの冷たいビールを多めに飲んで、のどごしを取り返せばいい。プハァー。(梶川伸)20.07.08

更新日時 2020/07/08


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