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編集長のズボラ料理(407) 塩こうじ豚肉とナスのみそ炒め

カタクリ粉を使っているので、少しとろみが出る

 豚カツはランチの王様だと思う。
 僕のような段階の世代とって、豚カツは子どものころの最高のごちそうだった。家の晩ご飯で豚カツは、何かの記念の日に食卓に乗った。戦後の貧しさが残っていたからだろう。
 もっと前に世代のある先輩にとっては、豚カツが象徴的な食べ物だった。先輩は戦地から引き揚げ、東京の食堂で豚カツを食べた。その味が忘れられないと話していた。苦難からの解放や平和の象徴が豚カツだったようだ。
 先輩はすでに定年になっていて、時々会社に訪ねて来ては、「いい豚カツ屋さんを知らないか」と尋ねた。いつものことなので、店の目星をつけておいて、一緒に食べに行っては、おごってもらった。僕にとって、豚カツはお得な食べ物でもあった。
 先輩と行った店もそうだが、豚カツ屋さんなるものがある。おもしろい現象だと思う。
 ステーキ屋はあっても、牛カツ屋はない。ミンチカツ屋もない。ステーキと豚カツ以外は、みんなまとめて洋食屋さんの一構成員でしかない。逆に言えば、豚カツは確固たる地位を占めている。
 それでありながら、豚カツ屋さんにはお得なサービスがついている店がある。ご飯とキャベツ、みそ汁のお代わりが自由。先日行った奈良県王寺町の「かつ喜」もそうだった。店員さんがそう教えてくれたので、店の名前のように喜んだ。しかし、出てきたものだけで、お腹が一杯になって、悔し涙を流した。
 ステーキ屋さんでは、お代わり自由に決しておめにかからない。と、思う。高いのであまり行ったことがないから、断定できないので、「思う」で逃げた。
 ステーキ屋さんとの違いのもう1つは、みそ汁だろう。これも、大きな鉄板のそばで見たことはない。と、思う。つまり、豚カツは「庶民のおかず」というジャンルでの王様なのである。
 豚カツのことばかり書いてきたが、今回はカツではない。豚肉は塩こうじに漬けておく。ナスを食べやすい大きさに切ってカタクリ粉をふり、軽く揚げて取り出す。みそを砂糖、みりん、白だし、しょうゆでのばし、たれを作る。フライパンに油をひき、豚肉とナスを炒め、たれで味をつける。これも庶民のおかずだから、家ではキャベツもご飯もみそ汁もお代わり自由。(梶川伸)2020.04.28

更新日時 2020/04/28


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