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編集長のズボラ料理(404) アイガモのステーキ・オレンジソース

クレソンなど添えると、さらに良い

 グルメの遍路仲間がいる。その女性はは滋賀県が好きなようで、お気に入りの食べ物をいくつも教えてもらった。休暇村近江八幡の精肉店の持ち帰り用ハンバーグ、西国33所観音霊場31番・長命寺に近い川田商店のウロリの佃煮などだ。
 グルメ情報は役に立つのだが、値段にはとんちゃくしないので困る。仲間20人近くでバスをチャーターし、1泊2日ずつ3回に分けて、琵琶湖一周をしたことがある。計画を立てるのは僕で、1番力をいれるのは、いかに会費を安く抑えるか、である。
 琵琶湖の北側を巡る回だった。彼女もメンバーの1人で、昼食場所として余呉湖のほとりの徳山鮓を候補に挙げてきた。「すし」というので嫌な予感がしたが、調べてみて予感が的中した。
 オーベルジュだった。それだけでも心構えがいる。まあ、ランチならどうにかかるかも、と考えて昼食のコーナーを見て、考えが甘かったのを思い知る。昼でもコースで1万円から。どうにかなるわけがない。
 誘われて5人で行ったカモ鍋も高かった。店は滋賀県・近江今津の丁字屋。もとは旅人宿で、築250年以上の建物だった。
 まず出て来たのは、小アユの佃煮とコイの洗い。続いて女将が七輪でモロコを焼く。ウナギのかば焼きも焼き直してくれた。
 メーンはカモ鍋。大きな皿に切ったカモがきれいな花模様に並べられていた。味には満足したが、飲み代を含めて1人1万円弱。ようやるわ。割り勘負けしないよう、ビールと酒をガバガバ飲んで、うっぷんを晴らした。その代わり、昼だというのに店を出ると、フラフラではあったが。
 それから5年ほどたった。彼女が足を痛めて、リハビリをしていると連絡があった。遍路仲間で見舞いと称して、酒を飲みに誘い出した。手押し車を使って彼女が連れていってくれたのは、自宅マンションに近い大阪市・天神橋商店街の居酒屋さんだった。
 ビニールを垂らしただけの簡単の入り口。土間に机を置いたような簡単な造り。値段も安い。徳山鮓や丁字屋との多大きな落差。やっと彼女も改心したと喜んで、安いからガバガバ飲み、店を出ると僕の方が足元がおぼつかなかった。
 カモ肉を売っている鶏肉の店があり、アイガモの塊を買ってきた。肉に塩・コショウをする。フライパンを熱し、皮を下にして焼く。しばらくして裏返して焼き、いったんふたをして蒸し焼きにする。最後にふたを取って、もう1度両面を焼く。オレンジを搾り、砂糖を加えたものを煮詰めソースにする。
 アイガモを食べて、彼女のことを思い出した。また見舞いと称して、酒を飲みに行くか。さらに改心しているかどうかを確かめるために。(梶川伸)2020.04.10

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