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編集長のズボラ料理(403) ふろふき大根の鶏そぼろあんかけ

薄口しょうゆを使うなど、あまり色が濃くならないようにした方がいい

僕は大根が好きだ。「最後の晩餐(ばんさん)に何が食べたいか?」と聞かれれば、「大根」と即答する。
 ただ、大根なら何でもいいわけではない。死ぬ前の最後の一品なので、当然こだわりがある。細いスティックの生大根なのだ。
 それだけだはない。好みの規格がある。大根を7.5の長さに切る。5センチでは頼りないし、10センチでは長すぎて口に入りにくい。つまり、5と10の中間ということになる。
 それを縦に細く切る。横はどうもなじまない。実はその細さ(太さ)に、最も厳格な規格を課している。1センチでは棒になる。1ミリでは歯ごたえがない。だから5ミリがいい。
 遊び仲間で例会と称して1月か2月に1回、リーゾナブルな居酒屋さんに集まる。食べ物はいろいろと注文するが、その中に刺し身が必ず入る。刺し身には大根の細切りの「けん」がついている。
 僕は刺し身のなかでは、けんが1番好きだ。珍しい人種だと思うだろうが、例会中間にもう1人いる。ただ軟弱なけん好きである。僕の場合は刺し身を一切れ食べたら次はけんを食べ、これを繰り返す。軟弱な仲間は刺し身を全部食べてから、けんにとりかかる。それではけんに対するリスペクトに欠けるではないか。
 例会では軟弱仲間にけんを譲る。広い心を示しているわけだが、本音を言えば、けんの極細さは頼りないので、くれてやっている。だから、けんをめぐる取り合いやけんかは起こらない。
 食べ方も大事だ。大根の上からしょうゆをかけ、その上にカツオ節を乗せる。カツオ節を載せてからしょうゆは邪道なのだ。カツオ節はサクサクしているべきで、しょうゆでベタッとさせては失礼である。
 今回の大根は生ではない。大根は皮をむき、食べやすい大きさに切る。米のとぎ汁でしばらくゆでた後、今度は強いだしで柔らかくなるまで煮る。鶏のミンチを軽く炒め、水を足してだしの素、しょうゆ、みりん、酒で味をつけ、大根の葉を小さく切ったものも加えて煮る。最後に水溶きカタクリ粉を加えてとろみをつける。
 この料理、最後の晩餐には約不足だが、それより前の料理なら候補に入れてもいい。しかし、最後から2番目ではない。それはすでに決まっている。指定席はウリ。皮をゼブラ状に切り、軽く塩をふって薄く切る。しょうゆをかけ、カツオ節を乗せる。決してカツオ節が先ではない。(梶川伸)2020.04.06

更新日時 2020/04/06


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