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編集長のズボラ料理(397) 厚揚げのクミン炒め焼き

厚揚げは半分くらいの厚さで焼くのがお薦め

 友人にお寺の住職がいる。尼さんで、料理が好きらしい。
 台所の冷蔵庫を明開けてびっくりした。扉側の棚に、ビッシリとハーブの瓶が並べてあった。これは名前を覚えるのだけも大変ではないか。般若心経どころか、理趣経を覚えるのに匹敵するほどの集中力がいると思われる。
 どのハーブをどんな時に使うのか、見当もつかない。そう思ったのだが、カレーにたくさん使うらしい。インドだったかバングラデシュだったか、本場の人に教えてもらったそうで、本格的なカレーを作る。
 寺の縁日の日に行くと、このカレーが出る。「住職カレー」と呼んでいる。高野山でレトルトの精進カレーを買って帰ったことがあるが、こちらは肉入っているし、野菜や果物もいろいろ使っていて、こくもある。そのうえハーブだらけで、複雑な曼荼羅の世界が鍋の中にできあがる。
 法要や護摩の後で、このカレーが出る。小さな寺なので参拝者は10人ほどで、住職も交えてカレーをいただく。これぞ、インド伝来の仏教について学ぶには、最適の素材ではないか。
 というのは表向きで、僕などは「お勤めもいいけど、カレーもね」の口で、仏教と関係なく食べる。仏教の話は、飲んだ時に回す。住職は「カレーもいいいけど、お酒もね」の口だからである。
 ひるがえって、わが家の台所。ハーブの瓶はそれなりに並んでいる。ただし、少し高い場所の開き戸の中なので、後の方に何があるのか忘れている。そのくらいの備品なので、ハーブへの思いは、住職のように深くない。ただ揃えただけで、用途はほとんど知らない。見栄で並べているだけのことだから、なかなかなくならない。
 ところが最近、よく使うものがある。クミンである。近くの医者に行った時、待ち合い室に置いてあるオレンジページで見て、簡単レシピを知ったからだ。遊びに来た娘にも使い方を偉そうに教えたら、「スーパーのレシピカードじゃないの」と言われた。残念でした。スーパーのカードには、クミンのようなお洒落なものは載っていないのだ。そう反撃した手前、クミン瓶を持って帰らせたので、何と有史以来初めて、クミンをまた買った。
 厚揚げを半分の厚さに切り、さらに一口大に切る。フライパンに油をひきクミンの粉を大量に加え、厚揚げの両面を炒め焼きする。最後にしょうゆを垂らして、さらに少し焼く。「カレーのいいけど、厚揚げもね」である。(梶川伸)2010.02.24

更新日時 2020/02/24


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