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編集長のズボラ料理(377) はんぺんとエビの団子のお茶漬け

ハルサメを入れてもいい

 お茶漬けが好きな人は多い。僕もそうで、台所にはいつも永谷園の「お茶づけ海苔(のり)」の袋がある。
 それを入れている引き出しには、かつお節のパック、焼きノリのパックが入っている。お茶づけ海苔はたいてい、2パック買う。大した理由ではない。安いからである。だから、買いたてはさまざまなパックであふれることになる。
 この引き出しはお茶漬け箱とも言える。カツオ節とノリをご飯に乗せ、ワサビを置いてしょいゆを垂らし、お茶をかけることもある。これが永谷園といい勝負をする。懸賞金を出し、テーブルを土俵に見立てて幕を持って一周したいほどだ。
 時々は、すきみタラも引き出しに入って、出番を待つ。カツオ節・ノリセットにこれを加えれば、懸賞金の幕を持って、テーブルを2周したくなる。
 日本人のお茶漬け好きは、その言葉に如実に出ている。「茶漬け」ではなく、「お茶漬け」と丁寧語を使う。「あめちゃん」のような幼児語ではない。茶漬けに対する尊敬と感謝の念を込めて、礼儀正しく「お」をつける。
 もし、ご飯にスープをかけたとする。決して「おスープ」とも「おスープづけ」「おスープかけ」とは言わない。そう考えると、お茶漬けは剣道や柔道なみに「お茶漬け道」と呼んでもいいほどの深さを持っていると言える。
 友人にもお茶漬け好きがいる。何でもかんでも食べる人だが、最後はお茶漬けで締める。宿に泊った場合でも、焼き肉屋さんに行ったとしても、最後は茶碗のご飯を3分の1
残し、それにお茶をかけて食べる。漬け物もご飯のお供も食べない。つまり、素お茶漬けである。
 このシンプルさ。邪念をふるい落として、ただご飯とお茶の世界に、静かに入り込んでいる。ここまで来れば、お茶漬け道の有段者だと思う。実際には、静かどころか、よくしゃべりながら食べる人ではあるが。
 はんぺんを手かフードプロセッサーでつぶす。小さく切ったエビ、みじん切りの大葉を加え、卵の白身をつねぎに入れて、よく錬る。団子にしてゆで、お茶漬け海苔で味付け。気には入っているが、シンプルさには欠けるので、まだまだお茶漬け道では初心者かもしれない。(梶川伸)2019.10.032019.09.30

更新日時 2019/10/03


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