編集長のズボラ料理(370) ゴーヤの肉詰め焼き
また、である。家族が「テレビで見た」という。我が家の場合、「見た」は「作れ」と同義語だから困る。しかも、しょっちゅう。
「見た」は「理解した」と同義語ではない。作り方を聞くと、はっきり覚えていいない。じゃあ、どうせいと言うのか。だからブツブツ文句を言ってから、いやいや作る。
ところが今回は違った。食材がゴーヤだったからだ。いやいやどころか、「喜んで~」と、がんこの店員さんのような声を上げそうになった。
元同僚が畑仕事を老後に楽しみにしている。最近は慣れてきたようで、たくさん収穫できるらしい。そうすると、大量に送ってくる。どうも僕の家を、中央卸売市場と勘違いしている節がある。
今回送られてきた野菜の中に、ゴーヤが20本近く入っていて、ぼう然とした。ゴーヤは痛みが早い。だから早く勝負をしなければならない。
ご近所さんにおすそ分けした。うまい具合に娘が遊びに来たので、飛んで火に入る夏の虫で、持って帰らせた。しかし、10本は手元に残った。
チャンプルーにした。天ぷらにした。カレー粉を混ぜた天ぷらにもした。大量消費のためにつくだ煮にもしたが、まだ食べ切れていない。3本は切って軽く塩でもみ、冷凍した。少し飽きてきたので、問題を先送りにしたのだ。
ゴーヤとの戦いに明け暮れている時の、「見た」だった。僕のレパートリーが少ないので、「見た」に乗ることにした。
「ゴーヤはレンジでチーンをしていた」。珍しく、作り方の一部を覚えているではないか。しかも料理はゴーヤの肉詰め焼き。「ピーマンの肉詰め」のゴーヤ版に違いない。これは簡単。作るぞ~、喜んで~。
ゴーヤは縦半分に切り、ワタを取り除く。レンジで1分、チーンをする。合いびきミンチと玉ネギのみじん切りを油で軽く炒める。味付けはコショウ、砂糖、しょうゆ。これをゴーヤのワタを取り除いた部分に詰め、上にとろけるチーズを乗せて、オーブンで焼く。
食べてみると、ゴーヤの苦みが弱くなっている。那覇市の市場で、ゴーヤだけのジュースを飲んだことがある。苦かった、苦かった。それがトラウマになっていたが、この料理で解き放たれた。「見た」もたまには、いいもんだ。(梶川伸)2019.09.05
更新日時 2019/09/05