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編集長のズボラ料理(374) 豆腐入り簡単お好み焼き

しょうゆを焦すことが大事

 食べ物のにおいの誘惑は強い。大阪人なら、近鉄鶴橋駅でだれもが実感している。
 駅に停車し、ドアが開くともうたまらない。焼き肉のにおいが立ちこめている。思わず飛び降りて、店の駆け出したくなる。駅ではよく、「無理な乗車はしないでください」とアナウンスがあるが、鶴橋では「無理な降車はお控えください」にすべきではないか。
 駅の西側は、20~30軒の焼き肉屋さん街になっている。においはそこから駅2階のホームまで立ち上る。成層圏まで届くのではないか、といった勢いすら見せる。だから、鶴橋駅でマスクをしている人は、決して風邪ではなく、焼き肉のにおいに負けないためである。
 たまらず降車して、焼き肉屋さん街を1周する。どこの店にも入らず、また駅まで戻って来られる人がいたら、よほどメンタルが強い人だ。もしくは風邪で鼻づまりの人だろう。
 サザエの壺焼きの誘惑も強い。浜辺を歩いていると、しょうゆの焦げたにおいの引力の強いこと。
 僕の場合、においを感じると5割の確率で立ち止まる。そして3割の確率で1つ買う。そして1割の確率で2個目を買うことになる。
 サザエは竹串で実を突き刺して、回しなが引き出して食べる。ところが奥のワタ(内臓)の部分がすぐ切れる。子どものころは3回に2回。大人になっても3回に1回。この差は何か。
 子どもころは、串をクルクル回す。しかし、串は固定しておいて、殻の方を回さないと、うまく取れない。このことに気づいた時、コペルニクス的展開で、成功の確率は倍増する。
 ワタが切れると、にっちもさっちもいかない。串を奥の方に差し込もうとするが、殻がグルグル巻きになっているので届かない。振れば出てくるかもしれないと考えて、強く振ってみる。ところが出て来るのはしょうゆだけで、服が汚れるだけのことだ。ワタを食べられずに悔しい思いをした時、2個目を頼むはめになる。
 豆腐を水切りして、小さいさいの目切りにする、ネギのみじん切りと、とろけるチーズを用意する。小麦粉を溶いて、お好み焼きの生地を作り、フライパンに油をひいて流し、薄い円盤状にする。豆腐、ネギ、チーズを乗せ、しょうゆを垂らし、具を包むように半分に折る。表面にしょうゆを落とし、焦しながら両面を焼く。
 何よりも大事なのは、しょうゆを焦すこと。チーズもついでに焦せば、具がいらないほどだ。(梶川伸)2019.09.23

更新日時 2019/09/23


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