編集長のズボラ料理(335) ザワ-クラウト風キャベツと牛肉のレンジでチーン
酢キャベツとの付き合いは長い。
毎日新聞に入社して、初任地は和歌山だった。昼ご飯で気に入った店がいくつかあったが、カレー屋さんだった。店の名前は覚えていいないが、記者仲間ではフランスカレーの名前で通用した。
なぜフランスだったのかも覚えていない。カレーの味も覚えていない。何せ半世紀も前のことで、加齢には勝てない。覚えているのは、付け合わせに出てきた酸っぱい漬け物だった。それがキャベツのピクルス。
「カレーには福神漬け」という、僕の中の常識が崩れてしまった瞬間だった。しかも、ピクルスという新鮮な響き。おしゃれなフランスカレーには漬け物ではいけないのだ。
そのピクルスが気に入り、「もっと食べたいと思ったが、カレーを2杯も食べる勇気ははない。やむなく何度もかようことになり、「カレーはフランス料理」と思い込んでしまった。
それが間違っていると目をさましてくれたのは、大阪に転勤になったからだった。会社の下の堂島地下街に、インディアンというカレー屋さんがあり、衝撃を受けた。カレーはフランスではなく、やっぱりインドなのだ。
会社の会社は「あそこのルーには中毒性がある」とこっそり教えくれた。しかし、僕が中毒になったのは、付け合わせの漬け物だった。またキャベツのピクルスである。
ただ、この店では我慢しなくても良かった。ピクルスの大盛りもあるからだ。その結果、「ピクルスはインド」だと、思い込んでしまった。
それがくつがえったのは、その後に神戸で勤務したことだった。同僚とよく会社に近いドイツビールの店に行った。
必ずあてにするものがあった。ザワ-クラウトだった。ドイツのキャベツの漬け物、つまりピクルスである。これが、なかなかいける。安いからバクバク食べた。結果として、「キャベツのピクルスはドイツ」と確定した。
よく食べたが、作り方は知らない。だから、味だけちょっとまねしてみた。どこかで見た料理の印象をもとに。
キャベツを千切りにして、塩をふり、しばらく置く。水分をしぼり、コショウ、酢、マスタード、あればクミンで味付けをする。皿に牛肉の切り落としを敷き詰め、その上にキャベツを乗せる。白ワインを振りかけ、ラップをして、レンジでチーンをする。
キャベツの酢漬けとの長い付き合いで、行き着いたのがこれ。フランスなのか、インドなのか、ドイツなのか、日本なのか、はっきりしないが。(梶川伸)2019.02.23
更新日時 2019/02/23