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編集長のズボラ料理(324) バタートースト入り卵スープ

トーストを4つに切った写真だが、6つに切った方が見栄えがよさそう

 茶碗蒸しと玉子スープは、よく似ていると思う。お店や旅館では運ばれてくると、品数を増やすための添え物と見られている点だ。
 遍路の先達(案内人)でしばしば四国に行き、宿に止まる。夕食で必ずと言っていいほど出てくる料理がある。それは茶碗蒸し。
 品数を多くして豪華に見せ用とするとき、茶碗蒸しが加わる。ところがメーン料理やサブ的な料理で、お腹が一杯になる。すると、何を残すかとなり、そこで選ばれるのも、可愛そうに茶碗蒸しなのだ。時には、「茶碗蒸しまでいらないのに」と、茶碗ごとムシされることさえある。
 茶碗蒸しはなめらかに作るには、技術がいる。それなのに、である。家でよく作って食べ飽きているならわかるが、そうでもないのに、である。原料の卵が安いからだろうか。
 それなら卵料理すべてに言えるのに、そうではない。オムライスはそれだけでやっていける専門店すらある。溶き卵を焼いて、ケチャップライスに乗せているだけなのに、である。
 旅館の朝ご飯は昔、生卵がお決まりだった。ところが今は人気がいまいちで、ゆで卵の方が多い。そう思い込んでいるから、卵の殻をむこうとして、中からドロリと生卵が出てきて、たまごる、いや、たまげることがある。団体で食べると、なかなか卵にとりかからないのは、誰かが生か、ゆでかを実証するまで待っているのだ。
 ホテルの朝のバイキングは違う。小さいオムレツを作っていると、レツができる。引っくり返す時に、ポンポンと手首をたたくのが、素人と違うだけなのに、である。
 中華料理の日替わりランチには、9割の確率で卵スープがついている。品数増やしが目的の1つだろうと、客は見る。ただスープは得で、のどをうるおすものがほしいから、茶温かい気持ちで迎え入れられる。
 卵スープはポピュラーなので、さして作ろうとは思わない。そう思っていたら、テレビ番組で、トーストを入れた卵スープを飲んでいたので、これはいただき。
 見たのは飲んでいる場面で、作り方は見ていない。でも、その名の通りだろう。
 パンを焼いてバターを塗る。コンソメか鶏ガラスープを作り、コショウ、ローレルなどで好きな味にする。溶き卵を入れて卵スープにし、器に注ぐ。バタートーストを6つ切りにして、スープに入れる。ゴマ脂はたらさない方がよさそうだ。
 友人にその話をしたら、「別々の方が、いいんじゃないの」と、いつも通り素っ気ない。そこで言ってやった。「別々に作って、パンを口の運ぶ時にスープに落とした、と思えばいいんじゃないの」(梶川伸)

更新日時 2019/01/01


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