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編集長のズボラ料理(210)卵の黄身のみそ漬け

みそに漬ける日数は、固さの好みで1日から3日。2日で全体が固まっている

 僕の親父や酒飲みだった。いや、ビール飲みだった。酔うと同僚を家に連れてきた。おふくろは大変だっただろう。
 それだけならいいが、とんでもない悪癖があった。帰る途中に近所のごみ箱をひっくり返すのだ。翌朝、おふくろが謝って回っていたのを思い出す。
 親父みたいな酒飲みにはならないぞ、と思っていたが、どうも遺伝してしまったらしい。ただ違うのは、ごみ箱をひっくり返さないことだ。若いころは、飲みすぎて自分がひっくり返ったことは何度かあったが。
 親父が好きだったビールのつまみは、小イワシを焼いたものだった。焼きたてを大根おろししょうゆで食べる。そのころは、カセットコンロなどなく、おふくろが台所で2~3匹焼いてテーブルに運んでいた。食べ終わると、また焼いて運んだ。おふくろは大変だっただろう。
 親父、おふくろはともに広島の人間だった。広島は小イワシをよく食べる。僕も墓参りで広島に行くと、小イワシを食べる。手開きした刺し身が好物だ。やはり、遺伝子は一緒なのだろう。
 家でも小さなイワシを焼いたり、オリーブオイルで揚げたりして食べる、ただし、作らせて運ばせることはない。自分で作って、自分で運ぶ。
 ある時期からおふくろは、妙なものをビールのつまみに出すようになった。卵の黄身のみそ漬けだった。だれかに教えてもらったのだろう。みそづくりを習って、おふくろも始めたころだったと記憶しているので、みその先生からの伝授だったかもしれない。親父ははしの先でチマチマとつまんでは口に運び、黄身1個でビール1本を飲んでいた。
 卵は黄身だけにする。容器に入っているみそにへこみを作り、そこに黄身を置き、できれば上の方にも軽くみそを乗せる。2日ほどそのままにしてから取り出し、みそを取り除いて皿に乗せる。
 塩分を吸ってネットリとした固さになり、みその味もついている。“ご飯のお伴”でもいいが、ビールのつまみが合っている。親父は作ってもらい、運んでもらっていたが、僕は自分で作って自分で運ぶ。(梶川伸)

更新日時 2016/09/01


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