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編集長のズボラ料理(173) 小イワシのオリーブオイル揚げ

二度揚げするといい

 そもそもは牧野富太郎の話だった。それがイワシのオリーブオイル揚げにつながっていくので面白い。
 遊び仲間で鍋をつついていた。そのうちの1人は千葉県出身で、ひょんなことから祖父の話題になった。学校の先生で、花が好きだったという。よく花を探しに行き、そんな縁でか、植物学者の牧野が家にも泊まった。
 そのあかしが、牧野が紙に書いて残した歌。「草を褥(しとね)に木の根を枕、花と恋して二十年」。ムムッときた。
 僕は四国遍路で何度か四国へ行く。高知市の31番・竹林寺は、高知県立牧野植物園・牧野富太郎記念館に隣接している。植物園の中には遍路道が通っていて、歩き遍路は入場料がいらない。そんなこともあり、何度か記念館にも寄った。そこで、その歌を見た、ような気がする。
 そのことを思い出し、「あの歌が家にあるなんて、おじいさんは大変な人やったんや」と驚きを伝えた。すると友人が解説してくれた。「有名な歌は『五十年』。うちのは『二十年』。時代ごとに年数を変えて、泊めてもらったお礼に渡したのでは」
 「何や」ということから、高知と千葉のイワシの話となった。この時点では、まだ焼いたり煮たりのイワシだった。ところが友人は若いころ、広島にも住んでいたこと話し出す。このあたりから生々しい、いや生のイワシが本となった本筋となった。
 広島といえば小イワシの刺し身が人気だからだ。友人は「刺し身にする時には、U字型の道具でさばく」と知ってかぶりをし、得意分野に引き込もうとする。僕も対抗心を燃やす。親類が広島市に多く、訪ねて行くと、「酔心」という店で小イワシをあてに酒を飲フェイントをかけた。友人にとって、尾道は盲点だった。行ったことがないという。そこで、とっておきのエピソードを披露した。
 別の友人と青春18切符で尾道に行った際、駅の売店のおばちゃんに、一杯飲める店を尋ねた。「海側は観光客向けだから高い」と言って、駅の山側の小さな店を教えてくれた。その店のお薦めが、小イワシの刺し身だった。
 それから10年ほどたって、しまなみ海道を通る機会があり、ついでに小イワシの店に寄って、また小イワシの刺し身を食べた。すると店の大将は「いつもあるわけではない」と話した。偶然2回とも、ラッキーだったわけだ。
 尾道作戦は成功した。一緒に飲んだのは3人。みんあで青春18切符を活用し、尾道に行こうと意気投合した。3人合わせれば200歳になるが、しょせん酒のうえの話で、酔実現はあやしいものだが。
 とりあえず刺し身は尾道の旅の時にして、今回はオリーブオイル揚げにする。お遍路仲間に教えてもらった料理だ。客が来た時に、山盛り作るのだという。小さめのイワシを使う。スーパーで頭とはらわたを取ったもの売っていたので、ラッキーだった。実際には、それを見つけたから、この料理にした。
 小麦粉とカタクリ粉とクレイジーソルトを混ぜる。それをイワシにまぶす。クレイジーソルトがなければ、コショウだけでもいい。油はオリーブオイル。中火で時間をかけ、じっくりと揚げる。骨も食べらるようにする。刺し身ではないから、少々時間を置いても、バクバク食べられる。(梶川伸)2016.03.01

牧野富太郎

更新日時 2016/02/27


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