このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(165) タマネギの甘辛蒸し

バルサミコ酢がなければ、酢でもいいが、やや少なめにする

 1カ月半か2カ月に1度、自宅近くの医者に行く。薬をもらうための診断である。
 そうではあるが、僕にとっての主目的は、新しい料理を入手することにある。予約制だから、それほど待つことはない。長くても20分くらいで、通常は10分ほど。その10分ほどの間に、待合室で備え付けの本を読む。オレンジページかクロワッサンを選ぶ。そして料理のページを繰る。
 僕は料理が下手なうえ、料理の基本を知らない。だから、なかなか料理を思いつかない。そこで、何かを参考にする。1番多いのは居酒屋さん。続いて、この医院の待合室で読む本。3番目はテレビの料理か旅番組となる。
 アイデアを盗むから、娘からは「オリジナリティーがないんじゃないの」と言われてしまう。そんな時、才能がつきてゴーストライターに頼み、それが事件へと発展していくサスペンスドラマの作家や、ワイドショーのネタを提供してしまう音楽家に同情したくなる。
 待合室では名前をいつ呼ばれるかわからないので、本は急いで読む。だからメモを取ることもしない。記憶に頼る。結構せわしい。
 やがて、女医さんが呼ぶ。「かじかわさーん」。僕は「はーい」と言って走る。女医さんが手でドアを開けて待っているからだ。まず、本を元あった場所に戻し、診察室に駆け込む。すると、まず血圧を測る。走った後だから高い。深呼吸をしてもう1度測定する。少し下がる。それでも高ければ、3度目の測定に入る。
 その間は雑談する。先日は、高野山の精進料理の寺の話を持ち出すと、女医さんは名前を控えていた。しかし、この雑談のせいで、せっかく覚えたレシピを忘れてしまう。
 これも待合室の本で読んだ簡単料理。タマネギを横半分に切り、切断面には十字に切れ目を入れる。しょうゆ、砂糖、みりん、酒、バルサミコ酢を合わせた「タレ」を作り、タマネギにつける。フライパンにオリーブオイルをひき、タマネギの切断面を下にしてしばらく焼く。タマネギを引っくり返し、タレを水で伸ばしてタマネギにかけ、ふたをして弱火で蒸し焼きにする。最後はスプーンでタレをすくい、何度もタマネギにかけて、味をしみこませる。
 だいたいそのようなレシピだったと思うが、女医さんと雑談しているうちに忘れてしまった。かなり違ったもになっている可能性がある。そうなれば、オリジナリティーが出たことになる。(梶川伸)2016.02.10

更新日時 2016/02/09


関連地図情報

関連リンク