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編集長のズボラ料理(161) 素揚げジャガイモとベーコンの甘辛煮

味付けの変化は好みで

 僕ら団塊の世代が酒でも飲んで、大学生のころの話を始めたとする。まず、70年安保や大学闘争・紛争のことになり、「大学に行っても、あまり授業がなかったなあ」となる。
 飲む話になると、サントリーレッド派かハイニッカ派か、どちらだったかを聞き合う。僕はハイニッカ派で、飲むときつくて「ヒーヒー」となるので、「ヒヒニッカだった」と答える。さらに、大学の横の友だちの下宿でヒヒニッカを飲んだ後、なぜかみんなで走り出し、酔いが回って、大学のプールに飛び込んだエピソードを明かすことになる。
 やがて旅の話題になる。当時は「均一周遊券」という安い国鉄のチケットがあって、みんなそれで旅をした。ユースホステルに泊まったり、野宿をしたりと、共通の思い出で盛り上がる。「ユースでは夕食の後、ペアレントの指導で歌ったやろ」「あれは、嫌やったなあ」。この会話も何度となく繰り返す。
 繰り返す思い出はほかにもあって、北海道に行った者同士の場合は必ず、「ジャガイモとトウモロコシはうまくて、よく食べた」と誰かが言い、ほかが相づちを打つ。当然僕も。今思えば、ふかしたジャガイモにバターをつけたもの、それに焼いたトウモロコシは、安かったから学生にはありがたかっただけなのだが。
 僕にとって、北海道旅行は人生の転換点だった。ジャガイモが好物となり、人生の終盤になっても変わらない。だとすると、団塊世代のかなりの男が、ジャガイモ好きの可能性が高い。周遊券が作り出したすり込み現象と言ってもいい。女はサツマイモに寝返った割合が高そうだが。
 ジャガイモは大きい方が使いやすい。ところが、時々スーパーで、ごく小粒なものを売っている。たいては、プラスチックのカップに入っている。量も多い。安いからつい買ってしまう。すり込み現象が尾を引いている。
 しかし小さいジャガイモは手に負えない。ゆでて皮をむくのはめんどくさい。だからポテトサラダにする気も起こらない。包丁で生のまま皮をむこうと思えば、気が遠くなる労力を要する。向いたとしても、短冊に切るには長さが足りない。つまり、皮のまま使う以外にないのだ。
 小さなジャガイモは、スポンジで皮をよく洗う。水分をふき取って、素揚げする。厚いベーコンをぶつ切りにする。鍋に水を入れて出汁を取り、砂糖、しょうゆをやや多めに入れ、ジャガイモ、ベーコンを加えて煮詰める。水の量はジャガイモ、ベーコンがひたひたくらいから始める。
 これを食べても、まだ小粒ジャガイモはまだ残っている。次はめんどくさくても、皮をむくか。(梶川伸)2016.01.30

均一周遊券

更新日時 2016/01/30


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