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編集長のズボラ料理(146) ゴーヤの天ぷら

衣を作る際、少しコーンスターチを加えるとパリッとする

 10年ほど前、毎日新聞の後輩を訪ねて、仲間と沖縄に行った。夜は彼と一緒に飲むことになっていて、それまで那覇市内をうろついた。市場では、豚の頭などを見ながら、買い食いを楽しんだ。
 印象に残っているものがある。ゴーヤのジュースだ。濃い緑色で、いかにも飲みにくそうだが、沖縄=ゴーヤのイメージが強いので、飲まなくては沖縄に行った意味がない。
想像した通り、いかにも飲みにくい。健康にいいのかも知れないが、ともかく苦い。そう思って、「ニガウリ」ではなく「ゴーヤ」と表現したのだが、そんな姑息(こそく)な手段で、苦さが薄まるわけでもない。
 昔は「ニガウリ」と言っていた。最近は「ゴーヤ」と呼ぶ人が多いのではないか。それも、苦さをはぐらかす手段に違いない。何せ僕の場合、たった1杯のジュースがその後の人生を大きく変え、それ以来、ゴーヤジュースは絶対に飲まないと決め、ゴーヤ料理も自ら進んでは食べなくなってしまった。
忘れようとしているのに、ゴーヤは積極的に攻めてくる。昨年は家の前にゴーヤの苗が置いてあった。そこで小さな花壇を作っているからだろう。銀行だったか郵便局だったか、年金を引き出しに行った際にもらったのだという。ありがたいことではるが、ゴーヤである。ネットと棒を買ってきて育てた。「たくさんできませんように」と祈りながら。
 思いはかなう。ニライカナイの神様が願いを聞き入れてくれたのだろう。親指くらいゴーヤが7~8個収穫できただけだった。そのくらいなら、野菜炒めの中に入れて食べることができた。
 その反動か、今年のゴーヤは強力だった。毎日新聞の元同僚が定年後、家庭菜園に入れ込んで、収穫した野菜を送って来た。その中に、ゴーヤが10本ほど入っていた。野菜を詰めた段ボール箱を開けたとたん、「どうすんねん、こんなに」と、思わず声を上げてしまった。
半分はご近所におすそ分けした。さて、残り半分。まず、ゴーヤチャンプルー。嫌いではないが、やはり苦い。ニガイカライだ。次に、さっとゆでて、酢の物にした。これはもっと苦い。では、どうしたか。
救いの神は、意外と近くの大阪市大正区にいた。うるま御殿という島唄の店にいた。
この店で時々、「芭蕉布」や「十九の春」を聞きながら、沖縄料理を食べる。チャンプルーはゴーヤではなく、いつも麩(ふ)チャンプルーを頼む。ゴーヤは天ぷらで食べる。これがゴーヤの1番好きな食べ方なのだ。苦みが薄れるのでありがたい。これでもらったゴーヤも何とかなる。
ゴーヤは縦半分に切り、種の部分を取る。今度は横に1センチ幅で切る。ゴーヤをビニール袋に入れ、小麦粉も入れて、まぶす。小麦粉を水で溶き、それを衣にして揚げる。
 これで来年も大丈夫だろう。ただし、10個以上は送ってこないことを、ニライカナイの神様にお願いしておこう。(梶川伸)2015.08.27

更新日時 2015/08/27


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