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編集長のズボラ料理(123) コマツナのオリーブオイル炒め

炒めすぎないように注意する

 その昔、コマツナは嫌いだった。野菜全般が嫌いだった。そんな僕も改心し、大人になるに従って野菜を食べるようになり、年を重ねるに従って好きになって、食生活上では大いに成長した。
 しかし、コマツナには困った。どうも手が出なかった。仕方がないから、山本リンダの歌でも歌って、周りの冷たい視線をはぐらかしてきた。♪コマッツーナ♪
 食べる気が起こらない最大の理由は、鉄分が多く含まれていることだった。「葉っぱと鉄分」が、どうも結びつかないのである。葉の中にさびた鉄が入っていたらどうしよう。歯でかんだらジャリッとして、口から吐き出すと砂鉄だと分かり、それを取り除く磁石を持っていなかったらどうしよう。そんな恐怖の連想ゲームになってしまう。
 ホウレンソウだって、鉄分が多いのは同じじゃないか、と思うだろう。しかし、ホウレンソウは率直なところがある。根に近いところは赤い。いかにも、そこに鉄が集まっているように、隠しだてすることなく見せている。たとえ鉄が集まっていにしても、そう思わせる真摯(しんし)な態度が見える。
 その点、コマツナは曲者だ。深い緑と肉厚な葉と茎で、完璧に鉄を包み込んでいる。
 半田舎に住んでいるので、地元の王産物を売っている店が近くにある。そこでもコマツナは、いくらでも売っている。縮みコマツナなるものもある。これは葉がゴワゴワしていて緑も濃い。鉄を隠すために違いない。買うもんか。
 遊び仲間が時々集まる家がある。そこの女主人は、自分では料理を作らない。集まった誰かが作る。ただし、女主人が2つだけ腕を見せるものがある。
 1つは、お好み焼きである。これには絶対的な自信を持っている。味ではない。フライパンの柄を両手で持ち、焼いている途中のお好みを投げ上げて、ひっくり返す、その技である。それをみんなに見せたがる。部屋を貸してもらっている手前、ほかの者は「オー」と言いながら、拍手をすることになる。いわば、儀式である。
 もう1つは、最近しばしば作るコマツナのオリーブオイル炒めだ。こちらは投げあげず、菜箸でかき混ぜる。だから技に対して、「オー」はない。ところが、食べてみて、「オー」が出た。コマツナに鉄が入っていないのだ。であれば、簡単だからズボラ料理に採用しよう。
 コマツナを適当な長さに切る。フライパンにオリーブオイルをひき、茎の方を先に炒め、後から葉も入れ、塩、コショウをふって、さらに炒める。クレージーソルトがあれば、なお良い。僕は当然だが、縮みコマツナを使った。癖がないのに、味はしっかりしている。鉄も見当たらない。(梶川伸)2015.03.13

縮みコマツナ

更新日時 2015/03/13


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