このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(120) はんぺんエビしんじょう

僕はさるさめを入れて量を増やす

 刺し身は好きだ。日本料理の代表でもある。飲みに行くと、10回のうち9回は注文する。しかし「和食を食べてるんだ」といった感概がわいてくるわけではない。食材の良さを別にすれば、魚を切るだけだから、家でもできると思ってしまうからだ。
 高松に住んでいる時に、よくお世話になったおでん屋さんのおばちゃんが、昨年末で引退した。49年も続けてきたから、引き時ではあった。
 おばちゃんは時々、会社に遊びに来た。そんな時、会社の前の中華料理店でランチを食べた。その店にはポイントカードがあって、10回食べると、1回がただになる。カードには名前と年齢を書くことになっている。おばちゃんは5歳もごまかして記入していた。
 イッセー・ミヤケのプリーツの服が好きだった。体格の良い人で、「これは、いくらでも伸びるから」と言って着ていた。パンパンに伸びて、プリーツらしくなかったが。
 友人と店を訪ねて、ご苦労さん会をした。昼間だったので、おでんの用意ができていない。そこで、友人は立ち食いのすし屋さんのサバずしを、僕は刺し身を持って行った。
 高松では以前、漁港などから直接魚を仕入れて売り歩く女性「いただきさん」がいた。もとは魚を入れておけを頭に乗せて売り歩いていたので、そう呼ばれた。今は、屋台に近い店を出して売っていて、イカとサワラを買った。
 すしも刺し身も、プラスチックのトレイに入っていた。それを3人で食べた。量だけは多いから、盛大なご苦労さん会だった。刺し身は、その程度のものである。
 ところが、店で「しんじょう」が出てくると、「和食を食べてる~」という気がする。家ではほとんど作らないからだろう。いや、作れそうな気もするけれど、面倒くさそうだから、挑戦する勇気が出ないからではないか。魚などをすり身にするので、手間がかかる料理といった印象は強い。
 友人たちが、大阪・ミナミの料理店「舛田」に案内してくれたことがある。年末だったせいか、最初にカズノコ一腹出て来たのに驚いた。大きなカラスミが餅に包んで焼いてあったのにもビックリした。しかし、「これぞ和食」とうれしくなったのは、カニしんじょうとクズ豆腐の吸い物だった。これは家では作れない。
 そこで、ズボラ料理としては、はんぺんを使う。はんぺんをつぶし、卵の白身とカタクリ粉少々を入れてよく練る。小さく切ったエビ、細かく切った大葉、ユズかレモンの皮のみじん切りを入れて混ぜたあと、団子にする。すまし汁を作り、団子を落として煮る。
 家でのしんじょうは、はんぺんさまさまである。すでに、魚のすり身が入っているからで、しんじょうの中間製品と言っても良い。「中途はんぺん」などと思ってはいけない。(梶川伸)2015.02.23
 

しんじょう いただきさん

更新日時 2015/02/22


関連リンク