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編集長のズボラ料理(115) 鶏のピスタッチョから揚げ

ピスタッチョはたくさん入れた方がいい

 香川県は「うどん県」と称している。讃岐うどんが有名だから、それもいいだろうし、話題性では県の作戦は当たったようだ。
 では、香川県の丸亀市が、「骨付鳥市(ほねつきどりし)」と名乗っているのはどうだろう。骨付鳥は鶏の骨付きのもも肉を、スパイシーにローストしたものを言う。丸亀市には、骨付鳥の店が集まっている。だから、骨付鳥市というわけだ。
 骨付鳥市は、どうも語呂の悪い。そのうえ、「うどん県骨付鳥市」と続けると、何のこっちゃとなる。
 骨付鳥では、「一鶴」という店が人気を集めている。大阪の北新地やミナミにも支店を出しているほどだ。しかし、食べるならやはり丸亀市で、である。
 僕は毎日新聞旅行の遍路旅で、先達を頼まれている。遍路のプランも立てる。昼ご飯は参加者の楽しみだから、なるべく地元の食べ物を選ぶ。一鶴も当然、行程に組み込むことになる。これが結構、冒険なのである。
 まず、鶏を嫌いな人がいる。一鶴は骨付鳥に鶏飯、鶏のスープと、鶏の料理は揃っている。しかし、鶏以外は白ご飯のおにぎりと、無料でついてくるキャベツしかない。
 仕方がないから、鶏嫌いの参加者のために、別の店も用意して、二手に分かれて食べたことが2度ある。1度は、丸亀市出身の画家、猪熊玄一郎の美術館の中にあるカフェだった。料理は骨付鳥にはかなわないだろうと思ったが、「美術館が良かった」と言われ、複雑な思いだった。
 もう1度は、和食の店をサブの昼食場所に予約した。昼食をすませて合流すると、「鯛飯がとてもおいしかった。みんなも、こちらに来ればよかったのに」と喜んでいた。これも、複雑な気持ちだった。
 冒険であるもう1つの理由は、鶏の固さにある。親鳥と、ひな鳥があるのだが、僕は「親鳥の方が味がいい」と勧める。ただ、気をつけなければいけないことがある。
 骨の部分に紙ナプキンを巻いてしっかりとつかみ、口は肉にかぶりついて、骨からはぎ取り、力を込めてかみ切る。肉の固さは尋常ではなく、もはや格闘技である。プロレスなら口の周りは血だらけになるところだが、一鶴では油でギトギトになる。
 遍路の参加者は年配の人が多いので、歯が欠けないか、入れ歯が壊れないか、いつも心配になる。案の定、ひな鳥にしておけばいいのに、親鳥と戦って、歯を痛めた男性がいた。負け惜しみに、「旅行保険で治してくれ」と言う。
 その男性とは、遍路の同窓会の名目で時々ビールを飲む。あの一戦から5年近くたつのに、相変わらず「保険、保険」とうるさい。
 そうなると、一鶴などに行かず、家で鶏のから揚げを食べるのが無難かもしれない。しかし、単純なから揚げでは芸がない。
 ピスタッチョを、1粒で4~5個に切り刻む。鶏はから揚げ用のもの用意し、塩、コショウをふる。鶏を2枚に切るように包丁を入れて、切り離れる手前で止める。切れ目にカットしたピスタッチョを詰めて、閉じる。小麦粉をつけて、油で揚げる。ピスタッチョは熱が入って少し柔らかくなるから、「保険」の男性も歯がかけることはない。

ピスタッチョ 一鶴

更新日時 2015/01/25


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