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編集長のズボラ料理(112) 竹輪のワカメ巻き

上品な色合いにする

 遍路の先達として、みなさんを四国に案内している。仲間は年配の人ばかりで、大半は女性である。男性は数も口数も少なく、影も髪も薄い。
 その点、女性は元気だ。特に口がよく動く。遍路旅のバスの中でも、話しているのは、たいては女性である。家に残してきた夫から電話がかかった人もいた。「お金のある場所が分からない」という内容だった。急に少しまとまった金が必要になったのだろう。「たんすの上から2番目の引き出しの缶の中」
 その女性はバスの中ほどに座っていた。僕の先達席は1番前。秘密の隠し場所が、僕の席まで聞こえてきた。ということは、バスに乗っていた遍路仲間は全員、隠し金の所在を知ったことになる。そんなことに動じることはなく、懇切丁寧に。最後に、「分かった?」と言って電話を切った。思わず僕も、「うん、わかった」と言いそうになった。
 女性は道の駅に着くと、別のエンジンがかかる。トイレ休憩を兼ねて、時間は15分から20分間で、それほど長いわけではない。だから、真剣勝負みたいなもので、入り口で買い物かごを手にして、買いあさる人もいる。人呼んで「買い物遍路」である。
 買うのは果物と野菜が多い。ひと山100円なら、ちゅうちょなく買う。150円なら、ちょっとだけ考えてから買う。200円ならためらった後、決意して買う。300円なら、根性のある人は買う。
 愛媛県内子町の道の駅「フレッシュパークからり」に寄った時は、柿のシーズンで、何種類もの柿が大量に並んでいた。みんな良く買った。道の駅に柿が大量にあるということは、ほかの販売所もそうだということだ。遍路道の無人販売所でも安く売っている。道の駅よりも安い場合もある。そうすると、悔しそうな表情を見せ、そこでも買う。荷物は増える。
 大阪に帰ってくるまでは、バスが荷物を運んでくれる。しかし、大阪駅の近くでバスを降りると、今度は自分の力で運ぶことになり、いかに大量に買ってしまったかを思い知る。
 肩にかけるバッグのほかに、3つの袋を提げてバスを降りた女性がいた。歩き始めたとたんによろけて、袋からお土産が飛び出した。袋の中は柿だけはなかった。ほかの食べ物に混じって、松山市の六時屋のタルトが3本もあった。子ども2人と自分へのお土産だそうだ。そりゃあ、重いわ。
 結局、手提げ袋2つを僕が持って、タクシー乗り場まで案内した。安い買い物だったか、高い買い物になったのか。
 大阪に帰る際の最後の休憩は、淡路島ハイウェイオアシスと決まっている。阪神高速の神戸線は渋滞が多く、トイレ休憩は必須なのだ。もちろん、最後の買い物もする。人気なのは、オニオンスープ、タコ飯の素、ワカメといったところ。軽い塩漬けの生ワカメ「竹炭ワカメ」をお薦めする。
 竹輪を適当な長さに切る。塩漬けのワカメなら塩を抜き、乾燥ワカメなら水で戻す。竹輪にワカメを巻いて、はずれないように、巻いたワカメで縛っておく。だしに砂糖、しょうゆで味付けをし、竹輪ワカメを煮る。色と味付けは上品に方が良い。竹炭ワカメを使うと、さらに良い。竹炭ワカメは、買い物好きの女性に教えてもらったのに、買い物遍路の実態を書き過ぎたかな。(梶川伸)2014.12.17

フレッシュパークからり 淡路島ハイウェイオアシス

更新日時 2014/12/17


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