編集長のズボラ料理(82) ウドの天ぷら
団塊の世代の仲間に、奈良県天川村出身の友人がいる。彼は自ら、山菜採りの名人と豪語している。ならば、腕前を見せてもらおうと、遊び仲間で天川村に出かけた。むろん、彼が案内人である。
天川村には、彼の母親が住んでいる。定年後に村で民宿を共同経営しようという話で盛り上がり、その下見というのが目的である。
彼はやはり、山菜採りの名人だった。アブラコシ、タラノメ、モミジダケと次々と摘み、天ぷらにして食べた。
1番印象に残ったのは、山ウドだった。教えてもらって引き抜き、そばのせせらぎで洗って土を取り、地中の部分をかじる。ビックリした。メンソレータムかタイガーバームのような強烈な香りが立つ。シャキッとしているのだが、ヤマイモのような滑らかさもあった。せせらぎにはアメノウオ(アマゴ)が泳いでいた。
民宿はどうなったか。一向に計画は進まない。「男女のトイレを別にしなければいけない、という規制がある」。彼は言う。だから、アベノミクスによる規制緩和まで待つという結論に達している。つまり、民宿などという面倒くさいことは、できる限り先延ばしにするというのが、みんなの一致したスタンスである。
僕は決して困らない。彼が時々山菜を摘んできて、仲間の家で食べることができるからだ。先日は、イタドリ、フキを料理して持ってきて、山のミツバは鍋に入れた。「手間はかかるが、金はかからない」という彼の言葉に、手間も金もかからない「ありがとう」で返している。
東京の友人が、大量のウドを送ってきた。こちらは栽培しているもので、友人の住んでいるあたりが、ウドの産地らしい。
さて、困った。長さが80センチもある。それが8本。どうやって食べつくすか。思いつくまま、作ってみる。煮物、カラシ和え、きんぴら。まだまだ無くならない。梅酢漬け、かき揚げ、バター炒め。まだ、ある。酢みそ、ミンチ炒め。ついに残り1本になたったが、しなびて使い物にならなかった。
1番気に入ったのは、ウドの天ぷらだった。ウドは短冊に切って、酢水にしばらくつけて、あくを抜く。水気をふき、小麦粉をまぶしたあと、衣をつけて揚げる。ほんのり苦みがあって、春らしい。山ウドのような強烈な香りを求めるなら、食べる時に、鼻の下にメンソレータムを塗る以外にないが。(梶川伸)
更新日時 2014/04/13