このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(39)豆腐のベーコンはさみ揚げ

ベーコンと大場以外にチーズをはさむのも良い

 四国の友人で、歌人の女性がいる。僕より年配で、地元新聞にも載る文化人だが、これがやりにくいらしい。
 父譲りで日本酒が好きだという。地元では顔がさすので、ホテルか小料理屋といった気取った店に行く。しかも量を抑えるので、酔わないらしい。
 ところが一旦、瀬戸内海を渡ると、もう怖いものなし。大阪に来れば、僕も酒の相手をすることがあるが、その時は庶民的な居酒屋の方が気に入る。炉ばた焼きの店さえ入ったことがないと言うから、ごちそうする方としては安上がりでいい。
 京都駅で待ち合わせ、昼ご飯を食べに行ったことがある。ちょっと見栄を張り、タクシーに乗った。ただし、目指したのは1000円前後で豆腐料理が食べられる店、北野天満宮の前にある「とようけ茶屋」だった。ちょっと不安があった。安いので、満員ではないだろうか。
 悪い予感が的中した。店の前に列が見える。せっかくタクシーに乗ってきたのに。車から降りずに、運転手に頼んだ。「どこか、湯豆腐の店に行って。嵐山でも東山でも」。この際、高くてもいいのだ。ところが、運転手は冷たく言った。「湯豆腐ぐらい家で食べなさい」
 頑固な人で、こちらの頼みを聞き入れない。仕方がない、目的を酒に変えた。ただ、昼間から飲める店を知らない。京都駅の飲食店街を思い出し、引き返した。
 食堂のような、居酒屋のような店に飛び込み、500円ほどの1人用湯豆腐を2つ頼んだ。やけくそである。昼の酒に酔った頭で考えてみた。安くついたのだろうか、高くついたのだろうか。
 随分と昔、JR天満駅に近い下町の天ぷら屋「天平」で別の友人と飲んだ後、「もう1軒行こう」となった。店の女将に「いい店ない?」と聞いた。親切な女将で、わざわざ案内してくれた。途中で、「この店は高いから入らん方がいい」と言いながら。行きついたのは100メートルほど離れた居酒屋。とろろコンブを乗せた湯豆腐が名物の、庶民的な店だった。いや、庶民的すぎる。途中で大将の友人が誘いに来て、一緒に出て行った。
 木綿豆腐を水切りして適当な厚さに切り、2枚の間にベーコンと大葉をはさむ。小麦粉、溶き卵、パン粉と順につけて、油であげる。さて、結論。家で食べれば豆腐は安い。運転手の勝ち。(梶川伸)

編集長のズボラ料理 とようけ茶屋 天平

更新日時 2013/03/18


関連地図情報

関連リンク