編集長のズボラ料理(760) ナスのミンチ挟み焼き
新聞記者の現役時代、先輩に誘われて飲みに行った店で、たまたま一緒になった人は、色を仕事にしていた。飲みながらのことなので、詳しい仕事内容は聞かなかったが、話は大変興味深いものだった。
ーー家電メーカーが冷蔵庫などの新商品を売り出す際、どんな色にするかの相談を受ける。そのために、自然の色を集めている。その種類が日本は多い。しかし、空の色となるとアフリカ。アフリカの空の色は売れる。--
酒の力は強い。色は面白いと思って、「日本の伝統色」という本を買ってしまった。今回、その本を探してみると、見当たらない。娘が「終活」と称して、本箱を整理してくれていたが、きっと捨てられたに違いない。
本にはたくさんの伝統色が紹介してあった。日本人は色に敏感なのだ。赤の系統については、たまたまメモに残していた。ある話をする時に、使ったことがあるからだ。
赤系統の色→紅、退紅、薄紅、韓紅、深紅、鮮紅、暗紅、桜色、撫子色。躑躅色、牡丹色、真朱、洗朱、水銀朱、鴇色、緋色、茜色、猩々緋、蘇芳色、葡萄色、臙脂色、小豆色、紅絹色、桃色、一斤染、赤白つるバラ、紅梅色、今様色、蒲色。何と豊かなこと。
紫系統の色も多かったが、メモが残っていない。ただ、紫は貴族や特定の人が着る物の色に用いたので、庶民が使うのには制約があり、そのために似たような色を代用した、と書いてあったのは覚えている。
その中に江戸紫があった。ただ、これを覚えているのは、三木のり平の漫画のノリの佃煮の印象の名前が頭に入っていた。
食べ物の紫色というと、ナスに結び付く。茄子紺という言葉もある。紫の系統か紺の系統に属するのかは知らないが、実に美しい。漬け物でこの色が残っていれば、ご飯を食べるのを忘れてしまう。。
料理で茄子紺を残すのは難しい。ズボラ料理では到底無理で、今回も色は気にしないことにした、
ナスは皮をピーラーでゼブラ状にむく。縦切りにして、隣同士の2枚をセットにする。セットの一方は両面を軽くオーブンで焼く、もう一方は両面に軽くオリーブオイルを塗っておく、ミンチとタマネギ炒め、だしの素、砂糖、しょうゆで時をつける。焼いてある方のナスの片面の上に乗せ、とろけるチーズを被せ、もう一方のナスでふたをして、オーブンで焼く。
以前、ナスの色が残りやすい料理を作ったことがある。ズボラ料理29回「ナスそうめん」だが、成功率は5回に1回くらいだから、ズボラは伝統的にナスの色には弱い。(梶川伸)2024.09.25
更新日時 2024/09/25