編集長のズボラ料理(691) 揚げのピカタ
油揚げは安いから、よく使う。でも、何で安いのだろう、とよく思う。
豆腐も安いからよく食べる。夏は冷や奴、冬は湯豆腐。これさえあれば、酒が飲める。いくらでも。
遊び仲間に、ひねくれ者がいる。冷や奴は食べるが、豆腐は食べない」。何でやねん。そう思って聞いてみると、「温かい豆腐や嫌い」だと言う。どういうこっちゃ。それでは、夏しか一緒に飲みに行けないではないか。、
揚げは豆腐から作るから、お互いに親類のようなものだ。豆腐が安ければ、揚げも安いのは当然だ。ただ、揚げの方が一工程多いのだから、豆腐よりも高くなるはずなのに、かえって安いくらいだから、それが不思議だ。
ただ、高い揚げもある。先日デパートで、新潟名物の栃尾揚げを売っていた。福井県の谷口屋と並ぶブランド揚げで、これはそこそこ高い。
厚揚げのように厚いのだが、揚げとしては薄揚げの部類に入るというのでややこしい。厚揚げのように中が豆腐ではなく、中も揚げのようにスカスカしている。これはきっと技術がいるのだろう。
デパートではたいてい、白ネギをはさんで売っている。それにみそを塗ってくれる。付加価値をつけているから、高くなるのもやむを得ない。それでも好物だから買って帰り、表面を焼いて食べる。そのパリパリさがよくて、1人で全部食べてしまった。
徳島県三好市に、小さなスーパー「歩危(ぼけ)マート」がある。名勝の大歩危小歩危、祖谷(いや)のかずら橋への入口に位置するので、結構知られている。「ぼけ」という響きもおもしろく、観光客がわざわざ訪ねていく。僕も。
そこで、自宅への土産に、歩危揚げを買った。8年ほど前で、値段はちょっと高くて350円。13センチ×30センチもあったから、それもやむをえないか。
店でも焼いて売っていた。これも食べた、大根おろしとネギが乗っていて、しょうゆとユズ酢をかける。表面のパリパり感ガ歯ごたえをよくする。揚げは焼くに限る。
揚げにしょうゆを少しかけて、両面をオーブンで焼く。冷めたら溶き卵にくぐらせる。フライパンにバターを入れて熱し、ピカタのように両面を焼く。
ピカタと言う言葉をつけたので、名前だけはちょっとおしゃれになった。しかし、卵も安い。結局は安さが売りの泥臭い料理である。(梶川伸)2023.10.14
更新日時 2023/10/14