このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(671) サトイモの竜田揚げ

竜田川のモミジに見えるか?

 ひょうんなことから、奈良県斑鳩町の花屋さん行くようになった。
 「千早ふる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」。百人一首の中の在原業平の歌で、竜田川の紅葉を詠っている。
 「嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の 錦なりけり」。これれは能因法師で、やはり竜田川の紅葉をの歌。
 この2つの歌のおkげで、竜田川は紅葉の名所となった。しかし、僕は行ったことはなかった。せっかく京都と奈良の府県境に住んでいるのに。
 奈良市に住む遊び仲間も、行ったことがなかった。「それは良くない」と意見が一致し、急にからくれないを見るために、車を走らせた。2018年のことだった。
 下調べもせずに、斑鳩町の竜田川を目指した。いい加減なもんである。何せ、僕たちの合言葉は「だいたいで」なのだから。少々の間違は「誤差の範囲」ですますし、かなりの間違いでも、「ファジー理論」で納得する。
 竜田川に着いたものの、どこが錦なのか分からない。川沿いに走っていると、「豆風花」という店の看板を見つけ、何か買って駐車場を借り、三室山から流れてくるもみじ葉を探すことにした。
 豆風花はファジーな店だった。元は豆屋さんだったそうで、豆腐屋さんなどに卸していた。やがて、自分のところでも豆腐を作って売るようになった。店の名前は豆腐をもじって豆風花。粋な名前だが、「花」は何か。豆腐屋さん経営者の母親が花が好きなので、店の一部を花屋さんも始めたので、花も加えたとか。
 駐車場を借りお礼に、花の苗を2つ買った。ドラキュラというパンジー、エッグタルトというビオラだった。変わった品種を置いていることが分かり、その後は時々買いに行く。
 ところで、錦は見つかったのか。店の人に聞いても、要領を得ない。ファジーな店の本領発揮である。そこで、川沿いを散策して探すことにした。モミジの木はあるにはあるが、まばらすぎて歌に詠むほどではない。
 仕方がないので店に戻り、車に乗ってしばらく走ると、駐車場があった。ちゃんと竜田公園と書いてある。そこが目指す場所だったのだ。豆風花に寄らず、そのまま走っていれは、もっと早く行き着いたのだ。「だいたい」グループらしい結末だった。
 サトイモの皮をむき、食べやすい大きさに切る。鍋にだしをとって、サトイモを煮る。味つけは酒、みりん、しょうゆ、おろしショウガ少々。サトイモの水分を取り、カタクリ粉をまぶして、油で揚げ、竜田揚げにする。
 でき上ってから疑問がわいた。何で竜田揚げというのだろう。インターネットで調べて、初めて知った。揚げた時のしょうゆ色が赤くなり、ところどころにカタクリ粉が白く残る様子を、モミジが流れる竜田川に見立てたそうだ。そんなことも知らずに揚げる「だいたい」さ。でも、業平も知らなかったに違いないから、誤差の範囲といえる。(梶川伸)2023.07.02

更新日時 2023/07/02


関連リンク