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編集長のズボラ料理(629) カボチャとサツマイモの煮びたし

白いハクサイより、緑色の野菜の方が見栄えが良さそう

 テレビの番組で、その道のプロが料理を作っていると、おいしそうに見える。実際においしいのだろうが、こちらは食べられないのだから、「おいしそう」としか書きようがない。
 作るのが料理人と紹介されると、「おいしそう度」はさらに上がる。シェフや料理研究家より、ストレートな表現だからだろう。
 料理人が作務衣(さむえ)でも着ていようものなら、ますます度数は上がる。それが藍染めで、しかも使い込んで藍色がかすれかかっているなら、度は沸点にまではね上がる。料理の味も見栄えが大事だが、料理人も同じこと。
 僕も作務衣を着ることがある。遍路旅の先達(案内人)の時だ。白衣(びゃくえ)でもいいのだが、僕の場合はちょっと演出する必要がある。酒の勢いで始めたいい加減遍路だし、人に何かを伝えるような修行などいしていないし、知識もない。人間の薄っぺらさを少しで隠そうという手段が、作務衣だからだ。
 きっかけは退職祝いに、遊び仲間から作務衣をもらったことだった。何かに使えないかと考え、思いついたのが先達の衣装。これも不純な動機である。
 和服を着て、真夏のビアガーデンでビールを飲む会に誘われたことがある。浴衣がないので、作務衣で行ったが、どうもそぐわない。だから先達以外には着ないことにした、コロナ以来、着ることもなく、たんすの中で眠っている、7着も。
 正午すぎのテレビ番組で、作務衣の料理人が登場した。作っていたのは、野菜の煮びたし。よし、夕食はこれを作ろう。台風のせいで風が強く、外出もできない。時間つぶしにはうってつけだ。
 買い物に行けないから、家にあるものを使った。料理人はエノキダkだったが、ないのでマイタケを細切りにした。だしを取り、砂糖、みりん、しょうゆで味をつけて煮る。それを大きめの容器に煮汁ごと移す。容器を氷水で冷やすが、これが料理人の技。
 カボチャは皮の一部を切り取り、食べやすい大きさに切る。サツマイモは輪切り。それを鍋でゆでるが、水の量はカボチャの厚さの半分。味つけは塩少々、蓋をして蒸し煮にし、途中で上下をひっくり返す。作務衣の技。
 ツルムラサキを茎と葉に切り分けてゆでる。着慣れた作務衣のこだわりだが、うちにはないので、ハクサイを使った。ゆでたものをキノコの容器に入れ、冷蔵庫で6時間冷やす。それが作務衣料理人の計算だが、僕の場合は夕ご飯までにそれだけの時間学なく、手抜きをして5時間にした。皿に盛り、スダチを絞り、スダチの輪切りも添える。
 できたものは、それなりだったが、テレビの方がおいしそうに思った。なぜかと考えた。たんすから作務衣を出して着ればよかったのだろうか。(梶川伸)2022.10.27

更新日時 2022/10/27


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