編集長のズボラ料理(575) はるさめとミニトマトのバジルスープ煮
昭和時代の終わりのころ毎日新聞の記者として、大阪市・キタの中心部の警察署を担当していたことがある。曽根崎署に記者のたまり場、記者クラブがあった。
事件、事故を取材するだけでなく、街の話題も取材するので、そういう記者のグループを、毎日新聞では街頭班と呼んでいた。
記者クラブには、デパートの広報担当者も出入りした。阪神百貨店に名物広報マンがいて、たまたま同い年だったこともあり、よく一緒に食べたり、飲んだりした。部屋の壁に紙を張り、2人で昼食に行っては、気に入った店をピックアップし、曽根崎署周辺昼飯マップなるものを作った。
ほかの社の記者もそれを参考にしていたから、記者仲間には喜ばれた。でも、読者には全く役に立たない。何をしていたやら。
夜もしばしば飲みに行った。福寿草という居酒屋さんは、中国からの帰ってきた残留日本人の夫婦の店だった。週末に作る水ギョウザが名物だった。具は豚肉、エビと何かもう1種類入っていた。僕にとってはギョウザといえば珉珉(みんみん)だったから、その水ギョウザの味の優しさにビックリした。
店の名前も優しい感じがした。何かいわれがあるのだろうと思って、夫婦に聞いてみた。夫婦の1人が大阪市福島区出身、もう1人が十三出身で、「福十三」から「福寿草」にしのだとか。完全に大阪のノリ。中国色など皆無。何のこっちゃ。
その広報マンが、トマトの情報を持ってきたことがあった。デパ―トの屋上で、トマトを水耕栽培しているという。取材に行って驚いた。1株で何百も実をつけていた。この印象はずっと残っていた。
ここ1~2年、トマトをいろいろ食べている。スーパーに行くと、いつでもトマトがあって、安いのから高いのまで、たくさん種類があるからだ。
塩塾トマトを買ってみたことがある。すると、パックに「水耕栽培」の表示があった。平成を過ぎ、令和も3年になっての“再開”。変わった名前なので、インターネットで調べてみると、水に塩を混ぜ、トマトにストレスを与えることで、甘さを引き出すそうだ。
ハルサメを水で戻し、半分に切ったミニトマトと一緒に、鶏ガラスープで煮る。味つけは塩、バジルペースト、コショウ、レモン汁。最後にら短冊に切ったハムを加えて混ぜる。
トマトを食べ比べてみると、名前がバラエティーに富んでおもしろい。分かったことの1つは、「アイ」が入っていたら、ミニトマトの可能性が大ということ。「愛するアイコ」「アイちゃん」……。(梶川伸)2022.01.19
更新日時 2022/01/19