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編集長のズボラ料理(249) ぶっかけチーズフォンデュー

あまり具を入れすぎると、食べる間にチーズがさめてしまう。それが問題だ

 「ぶっかけ」がはやりのようだ。いかにも新しい食べ方の提案のように、幅をきかしている。でも待てよ。僕の体験では……。
 僕が最初に「ぶっかけ」に遭遇したのは、20年前に高松市に住んでいた時だった。香川県といえばうどん。そのうどんの中に、ぶっかけがあった。注文してみれば、何ということはない。丼に入ったうどんの上に、客が自分でしょうゆをかけるだけのことだった。
なーんだ、店側が手間を省くだけのことじゃないか。セルフのうどんと似たり寄ったりではないか。
 さぬきうどんの最大の特徴は、安いことだ。低価格に抑えるために、店の手間を省き、客の手を借りる。つまり、手抜きをする。セルフの店の前には、よくのぼりが立っている。それには「手打ちうどん」と書いてある。でも、風に揺れると「手抜きうどん」と読めるではないか。
 手抜きをごまかすために、店側もいろいろ考える。セルフが讃岐うどんの最大の特徴だと印象づける。僕などその手にまんまと乗って、大阪から客が来た時は、セルフの店にばかり案内した。「これが讃岐うどんの王道」と言って、セルフの手順を教え、優越感にひたる。しかも、値段が安いし。
 ぶっかけの場合も、店側は印象づけで、手抜きをごまかす。しょうゆを回しかける時に、「1周半」ともったいづけるのだ。これなら特別費用もかからないし、「半」をつけることで、通ぶった気持ちにさせる。僕などその手に乗って、大阪からの友人がしょうゆをかける時、1周半の直前に「ストップ」と言って優越感にひたる。
 アイススケートや体操では、「1回半」はいわば、ひねりの失敗の演技である。ところが飲食業界では、高いパフォーマンスを誇る。ぶっかけうどんのほか、ウィスキーの水割りもしかりである。ウィスキーと氷と水とをかき混ぜる時、マドラーをグラスの内側の面に沿って1回半回し、そこでピタッと鉛直状態で止める。回っていた氷がマドラー当たって止まり、水の流れも止まる。それが美しいのだと教えてもらったことがある。
 話はそれたが、本題はぶっかけだ。別にうどんに限られたことではない。手抜きはどこにも存在する。手抜きを旨とするズボラ料理にはうってつけでもある。
 そこでチーズフォンデュー。金属製の洋風の串にパンなどを刺し、温めたチーズをつけて食べる。それはおしゃれではあるが、ズボラ料理らしくない。
 ブロッコリー、ジャガイモ、ソーセージなど、食べたいものは軽くゆでておいて、深めの皿に盛る。パプリカなど生で食べられるものは、そのまま乗せる。フォンデュー用のパウダーのついたチーズを買ってきて、牛乳と一緒に温めてトロトロにし、具財の上にぶっかけて、箸(はし)で食べる。パンだけは、皿のチーズをつけて食べるが、これも箸がいい。。(梶川伸)2017.03.17

更新日時 2017/03/17


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