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編集長のズボラ料理(234) カキとリンゴのグラタン

とろけるチーズを使えばよかったかも

 またである。「テレビでやってたけど」。この言葉が怖い。暗に作れと言っている。
 家族がテレビで見た料理に興味を示と、必ずこうなる。「やってたから、何や」と僕は思う。でも、グッとこらえる。僕も食べてみたものがあるからだ。
 229回のマーボー大根もそうだった。何でこんな名前かと思ったら、テレビでそう言っていたからだという。マーボー豆腐とはかなり違うようだが、作ってみた。
 211回の豚のみそハチミツ焼きもそうだった。「どんな味なのかなあ?」と聞くと、「口の中に広がるらしい」と返ってくる。テレビではそう言うのがルールみたいなものだが、それでは何にもわからない。仕方ないから、広がるかどうか調べるために作ってみた。
 今回も「また」がきた。テレビでやっていたのは、カキとリンゴのグラタンだったと言う。暗に作れと圧力をかけてくる。
 ここで言うカキは、柿ではなく、牡蠣(かき)の方である。僕もカキは好きだ。岡山県・日生の「カキおこ(カキのお好み焼き)」もわざわざ青春18切符で食べにいく。大好きだった小さな店「気まぐれ」が閉店したと聞き、途方に暮れたくらいだ。
 おしゃれにオイスターバーにも行く。ただし値段が高いから、外国資本の店には、弟におごってもらった時しか行ったことはない。
 もちろん家でも食べる。家の近くのスーパーで殻つきのカキを3個セット300円で売っていた。1人に1セットずつ買って、焼いて食べた。1つだけ中身のない殻だけのものもあり、悔しくてならなかった。
 「また」は、その余韻が残る翌日の話である。僕はウーンとうなった。「組み合わせがピンとこないなあ」と粘ってみた。ところが、敵もさるもので、「いただきもののリンゴもあるし」と責めてくる。その日はどうにか防ぎ切ったが、その翌日、つまり中身なしのカキの屈辱の翌々日に、挑戦させられることになった。悔しさが少し収まっていたのが、せめてもの救いだった。
 タマネギをすりおろす。鍋を弱火にかけ、バターを溶かし、すりおろしたタマネギを入れる。バターがからまったら、小麦粉を加えて練り、牛乳を少しずつ入れてホワイトソースを作る。その際、香りづけにローレルの葉1枚、味付けに塩とホワイトペッパーを入れておく。グラタン皿にバターを塗り、カキを並べ、その上を薄切りにしたリンゴで覆う。たっぷりのホワイトソースでかぶせ、上に小麦粉と粉チーズをふってオーブンで焼く。
 家族の反応はどうか。「うん。でもちょっと味が薄いかな」。生意気な。こちらは作り方を知らないのだ。でも、言われてみれば、そうかも。カキを軽くバターで炒めておくか、ホワイトソースの上にとろけるチーズを乗せておけばよかったか。しかし、決して口にはしない。(梶川伸)2016.12.19

更新日時 2016/12/19


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