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編集長のズボラ料理(216) ナメタケのつくだ煮ゆで卵

ナメタケのつくだ煮を入れすぎると辛くなる

 卵には秘密がたくさんあるような気がする。
 子どものころ、汽車に乗ると、必ずゆで卵を食べていた。たいていは縦に並べて網に詰めてあった。網には塩がついていて、それをつけて食べた。食べ終わると、網の中に折りたたんで入れてある紙袋に、卵の殻を入れた。今考えると、完結系の良い食べ物だった。
 1つだけ気に入らなかったことがある。ゆで卵を食べると、口の中の水分が奪われ、のどがカラカラになることだ。そこまでして、なぜ食べなければいけなかったのか。それが秘密の1つなのだ。
 のどの渇きを止めるため、冷凍ミカンを買った。セット割引があるわけでもないのに。
買わせるように仕組んでいたに違いない。
 15年ほど前、JR新大阪駅で乗り降りすると、必ずキオスクに寄っていた。買うのは「カレー味のゆで卵」だった。殻はカレー色をしていて、殻をむいても白身がカレー色をしている。インド人もビックリだろう。
 殻に穴や傷があるわけでない。その秘密を解き明かすために買っていた。「インド生まれの卵じゃないか」という友人もいたが、秘密がそう簡単に判明するわけがない。何せ、袋には特許申請中と書いてあった。
 カレーゆで卵は、いつの間にか姿を見なくなった。日本人の僕もびっくりしたくらいだから、おもしろくて売れるはずなのに。
 まだ秘密がある。卵と玉子はどう違うのか、という根本的な問題だ。卵は調理前のものに使うという有力な学説がある。言われてみると、生卵、卵かけご飯などと使う。では、ゆで卵はどうなのか。
 先の学説では、玉子は調理したものによく使うことになる。玉子丼、玉子スープ。なるほどではあるが、卵炒めはどうなのか。「医者のたまご」はどっちなのか。卵と玉子は、一卵性双生児なのか、二卵性双生児なのか、秘密だらけである。
 瓶詰めのナメタケのつくだ煮も秘密に満ちている。なぜナメタケなのか。
 原料はエノキダケで、瓶の原材料名にもそう書いてある。ナメタケはちょっとドロッとしていて、みそ汁に入れることがあるが、滅多に買うことはない。その点、エノキダケは安いから、しょっちゅう買う。
 エノキダケで作ってナメタケのつくだ煮。ドロッとした点が似ているだけではないか。ナメタケはエノキダケの別名だという学説もあるが、ナメられたものである。
 そこで、秘密の多い2つを使う。ゆで卵をつくる。殻をむいて、だし、砂糖、しょうゆでもう1度軽く煮る。火を止めてからしばらく置き、白身に色をつける。これは特許でも何でもない。半分に切り、黄身は取り出す。その後に、ナメタケのつくだ煮を入れ、スダチの皮を切るか、おろし器でするかして、つくだ煮に上にふる。白身はカレーの色づけでもいいかもしれない。(梶川伸)

更新日時 2016/09/14


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