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編集長のズボラ料理(200) 平インゲンのバター炒め

平インゲンの歯ごたえが残るようにゆで、炒めるのが良い

 子どものころ、野菜が嫌いだった。よくある話である。少し違うのは、少しずつ食べられるようになったのが、高校時代に下宿をしたことによることだ。
 おやじは転勤族だった。それに伴って、幼稚園、学校もよく変わった。幼稚園2つ、小学校4つ、中学校2つ。高校時代にまた転勤になったが、ついに僕は転校をしないことを決意し、下宿した。
 下宿生活は結構楽しかった。親の目がないので、よく遊んだ。たまたま同じ下宿生活の同級生がいて、放課後になると合流した。大人になってから振り返ると、寂しかったからだと分析できた。
 勉強よりも遊び。その効果は如実に現れ、メキメキと成績が下がった。僕はその友だちのせいにしているし、友だちにしてみれば僕のせいだとうらんでいるに違いない。受験校だったから、担任の先生に怒られた。「ほかの生徒まで巻き込むな」と。どちらに対して言っていたのだろう。
 楽しい生活の中で、唯一苦労したのが、下宿の食事だった。野菜がよく出た。最初、嫌なものは残し、あるいは内緒で捨てていた。しかし、お腹がすくので、野菜も無理やりではあるが、少しずつ口にするようになった。2年弱の下宿生活で、ほとんどの野菜嫌いを克服した。、年をとってくると、大逆転で野菜は大好きな部類に入ってきた。それは下宿のおかげだと感謝している。
 食べられない野菜として最後まで残ったのは、ピーマンだった。次はゴボウ。3位グループにつけていたのが、レンコン、ニンジン、それにインゲンだった。
 インゲンには2つしか顔がなかった。1つは、煮物の具材に入っているケース。なぜインゲンだけ緑色なのか、その正解は高校生には難しすぎた。しかも、味がなかなかしみこまないから、インゲンそのもの味が残っている。その味が嫌いだったから、逃れよようがない。もう1つはゴマあえ。ゴマくらいでは、その味はごまかせないのだ。
 おかしなことに、最近ではそんな野菜の味が好きになっている。都合のいいことに、半田舎に住んでいるので、農家が作ったものを売る店が、ミニバイクで行ける範囲にある。その店で、野菜を物色する。花オクラ、四角豆、大和マナ、メロンゴーヤなど、ちょっと変わったものも興味本位で買う。
 平インゲンも最初に買ったのは、地元産品の店だった。その後、スーパーにも出ているのを見つけた。さて、どう料理するのか。考えるのが面倒くさいから、バター炒めに決めた。ただ、火の通り具合を知らないので、さっとゆでてからにした。ここだけは考えた。
 平インゲンの両側を手で切る。ついでに筋のようなものも取ろうと思い、ウスイエンドウのように、切った端を筋部分に沿って引いてみるが、筋はついてこない。つまり固い筋はないので、料理しやすい。
 フライパンでバターを溶かし、軽くゆでた平インゲンを入れ、塩、コショウをふって炒める。バターの味も強いが、平インゲンの味も残っている。野菜の味を教えてくれた下宿の奥さんに感謝である。(梶川伸)2016.08.03

更新日時 2016/08/03


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