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編集長のズボラ料理(196) カブの天ぷら

じっくりと揚げるが、大きさの割には火の通りがいい

 カブは得体の知れない食べ物だと思う。見た目は可愛い大根のようだ。可愛いというのが、カブの本質を表しているような気がする。
 カブは大根とちょっと似ている。そこで2つを比べてみる。大根はあか抜けない食べ物と言える。大根の煮物、大根おろし、など料理の名前からしても、どこかダサい。唯一、ふろふき大根という響きの良いものがあるが、その実態は「たいた大根のみそ乗せ」だから、たいしたことはない。
 その点、カブはどうか。小料理屋さんで、カブラ蒸しが出てくる。カブとカブラの2つの名前を持つ得体の知れなさのうえ、上品な雰囲気に思わずたじろいでしまう。
 大根はどう料理しても、日本料理の域を出ない。居酒屋さんで食べる大根サラダが唯一、洋風かもしれない。しかし、その実態は、千切り大根のドレッシング和えで、「ドレッシング」という言葉に惑わされているだけのことだ。そのドレッシングもたいていは和風ときている。そうすると、千切り大根にしょうゆをかけるところを、ちょっとアレンジしただけのことだ。
 カブは完全に洋風に変身できる。カブのスープを思い浮かべてほしい。これはお椀には入っていない。店ではスープカップに入って、上品に出てくるから、思わずたじろいでしまう。
 変幻自在のカブだが、料理をするには苦労する。もともと料理などしていなかった人間のズボラ料理だから、どう手を加えれば思いつかない。だから、あまり食材としては使わない。
 中学時代の友人がわざわざ千葉から遊びにきた。定年後の暇つぶしの1つだったのだろう。会うのは彼の結婚披露宴以来だった。
 午前10時に奈良市の近鉄西大寺駅で待ち合わせた。「唐招提寺に行ってみたい」というので案内をし、後は夕方まで飲んだり歩いたり、いや飲んだり飲んだりで時間を過ごした。最後の居酒屋さんで、あやめ雪カブの天ぷらを食べた。紫色の入った美しいカブの実と葉と茎を別々に3種類の天ぷらにしていた。これがなかなかいけて、久し振りの再会の良いしめくくりとなった。結局、飲んでいただけだが。
 普通の白いカブを使う。カブは皮をむく。茎がついている部分は包丁を深めに入れて、固い部分を取り除く。それを6等分のくし切りにする。葉の部分を適当な長さに切る。それぞれに小麦粉をまぶす。小麦粉に少しコーンスターチを混ぜて水で練って衣を作る。衣をつけて揚げる。葉はかき揚げの要領で揚げる。僕は菜ばしではさみ、そのまましばらく油につけておく。
 天ぷらにすると、カブはとても甘い。葉もパリパリとして食感がいい。得体の知れない食べ物だと再認識する。

あやめ雪カブ カブラ蒸し ふろふき大根

更新日時 2016/07/13


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