子育てパパ 岡本昌司さん(下)
男手ひとつで3人の子どもを育てている岡本昌司さんは、仕事は毎日定時で終わらせて、午後6時に退社する。保育園に寄って3歳の双子を引き取るとすぐに帰宅。夕飯は宅配で届く食材を使って手作りする。
働き盛りの40代。もっと仕事をしたいという気持ちはあるが、「家族より大事な仕事なんてない」と自分に言い聞かせてきた。それでも、妻が亡くなって間もないころは、「私自身がパニックになってしまい、子どもたちを十分にケアできなかった」と話す。
そのころの長女を思い出すと、浮かんでくるのは「一人でボンヤリとテレビを見ている姿」だという。長女は当時、友人関係で悩みがあったらしい。後でそのことを聞いて、幼い心がどれほど傷ついたかを想像して胸が痛んだ。
「私に余裕がなかったから、娘も言い出せなかったのかもしれない」
そう思ったが、長女は「友達のことで悩んでるなんて、私らしくないと思ったから言わなかっただけだよ」と否定した。双子が生まれるまで一人っ子として育った長女はマイペースで甘えん坊なところもあるが、今では岡本さんより早く起きて朝食の準備をすることが増えた。
3歳の双子も健康で、よく話すようになった。毎日、朝と晩は写真の母親にあいさつをする。「なぜお母さんがいないの?」と聞かれたことはない。写真の女性が自分たちの母親だと、小さいながらも理解しているらしい。
「子どもたちがいたからこそ、がんばることができた。一人だったら生きる目標を失って、どんなことをしでかしていたかわからない」と岡本さんは話す。
約2年間、あえてそのままにしていた妻の歯ブラシや化粧品など、遺品の一部を最近になって処分した。
「自分の人生をあきらめた訳じゃない。最近はようやく前向きに考えることができるようになった」と笑顔を見せた。(早川方子)
更新日時 2010/10/07