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編集長のズボラ料理(106) マイタケのから揚げ

卵と小麦粉をつけてフライでもいい

 僕の家の近くのレストランで先日、ランチを食べた。ジュレの中に白いピラピラしたもの入った料理が出てきた。口に入れると、薄いマツタケで、わずか3枚だったが香りがあり、「フムフム」とうなずいた。
 秋には1度くらいマツタケを味わいたくなる。いや、願望を超えて、義務みたいなものだ。いやそれも越えて「食べなければならない」という強迫観念かもしれない。それは、「もう食べた」と言いふらすのと、「うん、今年も食べた」と自分で納得するだけのことではあるが。
 それなのに、今年は口にしていなかった。外国産を食べる機会は逸していたが、国産は豊作だ。それに期待していた。国産がスーパーにも出回り、値段を見ると、1本で何千円もする。買えるはずがない。
 でも見栄がある。一応、マツタケの前で足を止め、ちょっと考える、ふりをする。手を伸ばしかけて、首を横に倒し、「品がよくないな」と自分に言い聞かせる、ふりをする。ためらいの後、手を引っ込める。見栄だから、決して演技と悟られてはいけない。
 結局、今年は、ピラピラだけで終わってしまった。それでも、食べたことには違いなく、マツタケを食べる連続年記録は何とか継続できた。貴重な3枚である。
 居酒屋さんのおばちゃんに、マツタケ狩りに誘われた年があった。「社長」を名乗る店の客が、三田方面でマツタケ山を持っていて、ウジャウジャ採れるらしい。それで、すき焼きをして、ムシャムシャ食べるという企画だった。
 会費1万円と高かったが、ムシャムシャの吸引力は強かった。1万円を握りしめて、当日の集合場所に出かけたと、同じように1万円を握った顔見知りの常連客が10人もいた。
 社長の案内で山に入った。マツタケはそう簡単には見つかるものではない。必死になって探していると、社長が「ほら、そこ」と教えてくれる。それを掘る。ウジャウジャとはいかないが、それでも各自1本ずつ、中には2本を手にして、喜びの記念撮影をした。
 喜びはそこまでだった。社長がマツタケを回収するのだ。不作の年だったせいか、「これ、出荷するので」と。
 ムシャムシャはどうなったのか。回収の後、社長の案内で食堂に行った。社長の経営する店だった。すき焼きに、マツタケは入っていた。「外国産だけど」。社長は正直だった。ヤケクソでムシャムシャしようと、お代わりを頼んだら、追加料金を取られた。
 マイタケを用意する。1字違うだけだから、マツタケと大差ない、と自分に言い聞かせる必要がある。食べやすい大きさに裂く。小麦粉をつけて、油で揚げる。マツタケほどの威厳はないが、なかなか香りがいい。これなら、ムシャムシャムシャくらい食べられる。
 娘に勧めると、「居酒屋の定番メニュー」と言われた。なんや、そうか。マツタケもマイタケも、どうも相性が良くない。(梶川伸)2014.11.11

マツタケ

更新日時 2014/11/12


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