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編集長のズボラ料理(98) カマボコのハチミツ・マスタードしょうゆ

コリコリのカマボコが合う

 突然、「何か食べるものがないかなあ」と思うことがある。
 例えば冷蔵庫にほとんど食材がないのに、強い雨が降っていて、買い物に行く気にならない時。僕の家のすぐ前がイオンで、食料品売り場まで早足で行けば1分あまりだが、最近の集中豪雨ではパンツまでビショぬれになる恐れがある。そうなれば、食べるより洗濯となってしまう。
 例えば昼にお客さんが来て、しこたま飲んだ後、気づけば夕方になった時。もし買い物に行けば、酔って転んで、血が出るかもしれない。そうなれば、食べるより病院となってしまう。
 僕の場合、いざの時の備えとしてあるのは、卵、ジャガイモ、タマネギ、豆腐、ツナ缶、ベーコン、竹輪といったところだ。ジャガイモ、タマネギはちょっと手をかける必要があるが、あとはすぐにでも食べられる。
 そう書いてきて、竹輪があるのに、カマボコがない、ということに気づく。これは分析してみる必要がある。
 僕は練り物と鳴り物は好きなので、竹輪もカマボコの好物である。両方とも切っただけでもいいし、しょうゆをたらせば、さらにおいしくなる。ここまでのところ、全く差はない。
 次に気になるのは、値段である。竹輪はスーパーで買うと、3本から4本で100円前後という安いものがある。カマボコはどうかというと、ちょっと高めである。この差は大きいかもしれない。
 おやじは、山口県の「秋芳」というカマボコが好きだった。よく親類からもらって、うまそうに食べながら、ビールを飲んでいた。真っ白でコリコリしていて、いかにも高そうに見えた。僕も好きだったが、自分で買ったことはない。その高級感の印象が、冷蔵庫の常備食料としては遠ざけてしまうのかもしれない。
 そういえば、カマボコにはちょっと気取ったところがある。竹輪は昔、竹に巻いてあったが、そんな形式的なものを捨て去り、穴だけを残して、僕ら庶民レベルにまで接近してきた。カマボコは、相変わらず板にしがみついて、気位の高さを保っている。ここにも両者の違いがある。
 竹輪は竹はなくなったが、その名残の穴があるので、遊ぶことができる。のぞいてもいいし、笛のように吹いてもいい。でも、カマボコは遊べない。
 竹輪の穴には別のものを詰めることもできる。キュウリを詰めればビールのあてになるし、チーズを詰めて天ぷらにすれば、それも一品になる。フジパンなどは、穴にチーズを詰めてパン生地でつつんだ「ちくわパン」まで出している。つまり、竹輪の方が料理のレパートリーが広い。おでんにしても、酢の物にしても、カマボコは竹輪にかなわない。だから、冷蔵庫にはないのだ。
 そこで、カマボコのレパートリーを増やすことにした。カマボコを適当に切る。しょうゆ、マスタード、ハチミツを混ぜて、かけて食べる。簡単ではあるが、これは竹輪には合わない。コリコリして、気取ったカマボコにこそ似合う。(梶川伸)

ズボラ料理

更新日時 2014/09/12


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