編集長のズボラ料理(69) しょうゆスペアリブ
スペアリブを作る時、いつも考えることがある。スペアリブは高いのか、安いのか。
豚の骨付きのあばら肉を買い求める。買うのはたいてい、スーパーの肉売り場である。少しだけこだわって、外国産ではなく、日本産を探す。それでも、100グラム200円までだからうれしくなる。
1人3本として、それに人数を掛けた数を買う。タイガースが勝って巨人が負けた翌日など、気分がいいから、「1人4本にするか」と太っ腹になる。それも安いからできるのだ。
家に持って帰る。ボリュームがあるので、うれしくなり、その時点で満腹感が味わえる。そして、「たらふく食べるぞ」と、早くも気分が高揚する。
スペアリブが焼き上がる。実食である。その時に軽く思う。「ちょっと小さくなったみたいやな」と。でも、「焼けば少々は縮むやろ」と納得する。
さて、本当の実食である。1本食べ終わって思う。「案外、肉の量が少ないな」と。骨付き肉なので、当たり前なのだが、どこか損をした感じがして、骨にへばりついた肉を歯で引っ張ってはがし、すべての肉は胃に運ぶ。
やがて、当初考えていた3本を食べ終わって思う。「ちょっと物足りないな」と。骨のせいだ。骨が肉だったら、きっと3本で満足するはずだ。やむをえず、最後の1本を手に取る。1人4本にしておいて良かった。
皿の上には4本の骨。それを見て冷静に考え始める。ボリュームがあっても、骨は食べられない。それならば、料金に反映するグラム数から、骨のグラム数を引くべきではないか。引かないのであれば、実はスペアリブというのは高い食べ物ではないか。どうでもいい話だけれど。
神戸で住んでいた30年ほど前、友人にスペアリブ屋に連れて行ってもらった。兵庫県庁の北側から歩いて六甲山に入っていくと、30分ほどでその店はあった。年配の夫婦が、戸外に設置したバーベキューの装置で、じっくりと焼いていた。確か、昼も夜も、1組か2組に客を絞っていた記憶がある。
山の中でのんびりとした時間を過ごした。その店に行ったのはたった1回なのだが、その夫婦の生き方が印象に残り、スペアリブは僕の食生活の中で、ゆるぎない地位を占め、スペアリブといえば焼くものだと決まってしまった。
スペアリブは4~5分レンジにかけ、骨の周辺にも熱を通しておく。タマネギをすり下ろし、ニンニクとショウガのすり下ろし、しょうゆ、ケチャップ、ナツメグを混ぜてタレにする。タレにスペアリブをつけておいてから、ガスコンロのグリルの部分や網を使って、ゆっくりと焼く。(梶川伸)
更新日時 2014/01/19