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豊中・池田の文化財① 豊臣秀吉画像

左下には、「これがよくに(似)申よしきい(貴意)にて候」とあり、最も秀吉に似た1枚が選ばれたことがわかる

 豊中市、池田市には31の国指定重要文化財がある。この連載では、その歴史やいわれを紹介していく。第1回は池田市・逸翁美術館所蔵の豊臣秀吉画像だ。
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 豊臣秀吉は、戦国から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。織田信長、徳川家康と並び、知らない人はいないと言っても過言ではないでしょう。逸翁美術館を知らなくても、この秀吉の絵は、テレビや教科書などで1度は見たことがあるのではないでしょうか。
 いつもは秀吉の顔の部分のみが取り上げられ、全身がどうなっているのか、知らない方もいるかと思います。胴体や衣装を見ると、手足や装束は精緻に描き込まれておらず、反対に、顔から胸のあたりまでが描かれた部分は、顔の皺(しわ)やひげ等まで描かれています。これは、秀吉の顔だけを描いたもの何枚かを本人に見せ、選ばれた1枚を貼った作品だと考えられています。これ以後、秀吉の肖像画はいくつも描かれましたが、その多くの肖像画の元になった作品と伝えられています。
 逸翁美術館の所蔵品を代表する作品ですが、残念ながら美術館ではなかなか公開する機会がありません。それというのも、肖像画の持つ強い力のせいか、秀吉像の前では、どんな作品を展示しても印象が弱くなってしまうという、学芸員泣かせ(?)の一面があるためです。これも「天下人」たる由縁かもしれないと、秀吉像を前に思いながら、いつか信長と家康の肖像画と共演出来れば楽しいかも、と想像したりしています。(逸翁美術館学芸員・竹田梨紗)
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」57号(2013年11月14日)

更新日時 2013/11/12


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