地域医療フォーラム がん治療の真実とウソ
マチゴトはさまざまな分野の専門医を囲んで、身近な健康に関する理解を深める「地域健康フォーラム」を毎月開いている。6月は、神戸市立医療センター中央市民病院の腫瘍(しゅよう)内科部長、辻晃仁さんを講師に招き、「がん治療の真実とウソ」と題した講演を行う。抗がん剤を使ったがんの化学療法が辻さんの専門だが、今回は、がん全般にまつわる誤解を解き、曖昧な情報を鵜呑みにする危うさを分かりやすく解説してもらう。
フォーラムは6月30日(日)午前10時から、豊中市玉井町1、とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」で開く。(早川方子)
◇講師は 辻晃仁・神戸中央市民病院腫瘍内科部長
◆最新治療、臨床試験、標準治療
多くのがん患者が治療法の選択に悩み、混乱している。玉石混淆(こう)の情報が行き交っているためだ。辻さんは「刺激的な言葉に踊らされ、基本的な知識がないままでは、治療のスタートラインにも立てない」と警告する。
よくある誤解の例として挙げるのが「最新治療、臨床試験、標準治療」という言葉。「最新」こそ「最も進んだ医療だ」と期待をし、「臨床試験」と聞くと「モルモットのように扱われるのでは」と不安をかき立てられ、「標準治療」は「なんだ、普通の治療か」と物足りなさを感じる人が少なからずいる。
「標準治療は、例えるなら横綱の白鵬のようなものです」
一番強くて、信頼でき、実績があるのが標準治療だ。過去の膨大な治療実績をもとに、最初の治療、それが奏功しない時に行う次の治療、とすべての手順が決まっている。「一次治療が思わしくなくても、二次に期待できる。今場所がダメでも来場所で優勝が期待できる横綱みたいでしょ」と辻さんは説明する。
そして臨床試験は「一番強い標準治療に勝てる可能性がある新しい治療」だ。例えるなら「日本で十分な実績があり、おそらくは米大リーグでも活躍が期待される1年目のダルビッシュのようなもの」。標準治療にも勝てそうな、新しい治療のことだ。「大リーグ、つまり世界で実績を残せば、それが新しい標準治療に置き換わる」と話す。一方、最新治療は「ドラフト1位の選手」と言う。「テレビや新聞に載ってはいるが、まだ活躍していない、本当に活躍できるかどうかも分からない。つまり何も実績のない治療法です」。最新治療ばかり求めるのは、ベテランの医師を排除して、経験のほとんどない研修医ばかりを主治医にするようなものだ、と辻さんは言う。
◆誤解を取り除き、納得のいく治療
「がんの患者さんが陥りやすい間違いは、確率が低い治療を探しがちだということです」
「画期的」「今までにない」といった言葉にひかれ、がん以外の病気ならまずは惑わされないような根拠のない治療法に頼るケースが多いという。ほかにも「入院しなければがんは治せない」「食事をするとがんが大きくなる」「抗がん剤はしんどい思いをしてこそ効果がある」などの間違った理解は枚挙にいとまがない。「そんな誤解はひとつずつ訂正し、存在しない不老不死の薬を探すような根拠のない『最高の治療法探し』から患者さんに抜け出してほしい。そうでないと最終的に納得できる治療は行えない」と話す。そして「メディアを含めて、社会全体でがんの正しい理解を深める場を作りたい」と話している。
◆応募要項
【主催】 毎日新聞ローカル、毎日新聞社
【日時】 6月30日(日)午前10時 ~11時30分 (午前9時30分から受け付け)
【受講料】 無料(要申し込み) 【定員】 30人(先着順)
【会場】 豊中市玉井町1-1-1、とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ
(阪急豊中駅直結、エトレとよなか5階)
【申し込み方法】 ①名前②年齢③性別④住所⑤電話番号⑥がんに関する質問を明記し、ファクス(06-6346-8256)か、はがき(〒530-8251 大阪市北区梅田3-4-5 毎日新聞ローカル「マチゴト編集部」)、またはメール(info-toyonakaikeda@machigoto.jp)で申し込みを。電話(06-6346-8255=平日の昼間)でも受け付けます。
更新日時 2013/06/11