編集長のズボラ料理(718) イカとチイゲンサイの炒め物
「まち中華」は最近、テレビでよく取り上げられる。僕は自慢ではないが、高級中華派ではない。自慢ではないが、そんなお金がないからだ。その代わり、まち中華にはよく行くので、何を今さらの感がある。
まち中華とは?と改めて聞かれると困ってしまうが、イメージは何となくみんなが共有している。安い。庶民的で、人なつっこい。店内は雑然としている。店の外は黄色や赤を使うことが多い。
京都市北区に息子が住んでいる。70メートルほど離れて中華料理屋さん「紅華」があり、息子と行ってビールを飲む。
ここは共有イメージを全部を揃えていて、僕は「本格的大衆まち中華」の称号を密かに与えている。学生割引きはあるし、作業着の人、草野球の帰りのユにフォームの人も見かける。ビールのあてに定食を頼めば、それだけで満腹になる。
「冬でも冷麺が食べられる」で有名な中華料理屋さんが京都市北区にあると知り、息子を誘って行ってみた。「中華のサカイ」で、名前からしてまち中華っぽい。
ほとんどの客が冷麺を頼んでいるで、選択の余地はない。ただ、ハムを使ったものと焼き豚を使ったものの2種類のあり、そこだけは客に選択の余地がある。僕は焼き豚にした。
息子は何とマーボー丼とイカの香り焼きを注文した。冷麺は無視。協調性のない奴だ。
店を出て息子の家に向かう途中、なぜか少し遠回りをした。そこで見た物ものは?何とサカイの支店だった。家まで250メートルの場所。息子は何度も行って、何度も冷麺を食べているらしい。「早く言え」である。
サカイのイカの香り焼きを食べていて、神戸市・南京町の中華料理屋さん「民生」を思い出した。神戸に住んでいたころに何度も行った。創業以来の名物がイカの天ぷら。天ぷらという名前だが、アオリイカに軽く粉をつけただけの素揚げに近い。これと焼きそばを食べれば、南京町の歴史から味まで、すべてを知った気分になれる。
今回は冷凍の厚いイカを使う。表面に切れ目のあるものが多いが、なければ片面に包丁で切れ目を入れ、短冊に切る。チンゲンサイは茎と葉の部分に分け、食べやすい大きさに切る。フライパンにオリーブオイルを入れ、スライスしたニンニクを加えて熱し、ニンイクオイルを作る。イカを入れて両面を焼いたあと、チンゲンサイの茎を入れ、コショウをふり、中華の香味ペーストで味つけして炒める。最後に葉も加えてサッと炒める。
その昔、「南京町で食べるなら焼きそばだ」と、先輩の奥さんに教えてもらった。南京町の焼きそばはたいてい焦がしてあり、それが特徴だから、当たり外れがない、と。今でも忠実に守っているが、たまにはもっと高い料理も食べたいと思いながら。(梶川伸)2024.03.12
更新日時 2024/03/12